ペットは家族だからこそ、ペットのためにしつけを(PLSC 上形元惠さん)

今回は、ペットの保護活動をしている「ペットライフサポートカンパニー」の上形元惠さんからお話を伺いました。
上形さんは、10月に開催する「犬猫里親会」で、しつけ相談を引き受けてくださいます。
ペットのためにしつけについて、お話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
上形さん:ペットライフサポートカンパニー代表 上形 元惠さん


対談の様子はこちらからご覧いただけます

 

-「ペットライフサポートカンパニー」の活動について

えびさわけいこ(以下えびさわ):上形(かみかた)さんは、どうしてこの事業を立ち上げたのですか。

ペットライフサポートカンパニー代表 上形 元惠さん(以下上形さん):
ペットライフサポートカンパニー自体は、犬のトレーニング、しつけ、それからお預かりが主体です。
若い頃に仕事の都合で海外出張が多く、当時は3頭くらい犬を飼っていたのですが、トレーナーの方に預かっていただいたのですね。

長期出張していたオーストラリアでは犬の牧場を見学したりして、動物についても学ばせていただきました。そして日本に戻ってしばらくしてから、体を壊しました。休養中に次の進路を考えていた時、犬たちをお願いしていたトレーナーさんにいろいろ教えていただいて、ペットを訓練する今の仕事に決めました。

えびさわ:本来は訓練をするお仕事なのですね。1日でどれくらいお預かりしていますか?

上形さん:今はコロナ渦なのでここ2年は少ないですが、それ以前で多い日は1日で10頭ほどお預かりしていました。仲がいい子同士は一緒にお散歩ができますが、そうでない時は犬の数だけ散歩することもあります。外出することに。

えびさわ:1日中散歩している日もあるのですね、それは大変!

 

-飼い方のポイント

えびさわ:皆さんの中には、犬の飼い方やしつけで悩んでいる人も多いと思うので、ちょっとしたポイントを教えて頂けますか?

上形さん:まずは「人と暮らすために、犬にしてほしい」ことを前提に考えることです。

子犬を飼い始めたとしたら、犬のお母さんがどうやって子育てするかを学んでいただけるのがいいのかなと思います。今、えびさわさんにお世話になり里親さんを探す保護活動をしています。野犬の子をお預かりして、里親さんを探していますが、野犬の子たちは犬の群れの中できちんと育っているので、吠えないし噛まない。ただし、人が子犬の時から育てていると、鳴き声がうるさくて噛むようになります。

えびさわ:私も小さい頃から犬を飼っていたので分かりますが、ものすごく吠えます。

上形さん:なぜ人が育てるとそうなるかというと、子犬のうち「かわいいかわいい」と人は触るでしょ。ところが、犬のお母さんは甘やかしたりしませんから。ちょろちょろして危ないことしていたら「ダメ」と叱る。子犬が遊んでいるときに、横になっているお母さんの尻尾をかじってみて、すごく痛かったりすると怒ります。子犬の方もびっくりしながら「この強さで噛んだらいけない」と学習します。

えびさわ:野犬の子犬が吠えないのも、お母さんから学習するのでしょうか。

上形さん:子犬が鳴き始めたらみんなの居場所が分かってしまうので、「鳴いてはいけない」とお母さんなど大人の犬が教えます。鳴き声が敵に聞こえると襲われるので、吠えるなと。野犬は怖いって皆さんは考えますが、実は大人しいですよ。

えびさわ:吠えないですね。実は何匹もこの周りに犬がいますが、とっても静かです。

上形さん:人間の方に引き寄せるのではなく、「犬を犬としてきちんと育てる」。このポイントを守っていただければ、賢くていい犬に成長するということですね。

えびさわ:私、常に「ペットは家族です、ファミリーです」って言っているのですが、確かに家族だけど人間ではないことを前提にしないと、ワンちゃんや猫ちゃんにいい影響はないのですね。

上形さん:ポイントを捉えてきちんと叱ること、それ以上のことはしないことです。本当に優しくかわいがるとはどういうことかを、考えるようにして頂きたいです。
噛むから、吠えるからそんな理由で動物愛護センターに持ち込まれる犬や猫が増えています。この問題を防ぐためにも、飼い主の方でペットをきちんとしつけることが最も大事です。

えびさわ:それがワンちゃんや猫ちゃんの命を守ることにつながる行為なのですね。これから殺処分0を目指していかないといけないのに、かわいいと思って飼っても「自分になつかないから」と手放してしまう方もいらっしゃると思いますが。

上形さん:今、コロナ渦で犬や猫を飼う方が増えていますが、「おしっこをするからイヤだ」などの単純な理由で持ち込む事例もありますね。

えびさわ:動物だから鳴くし、おしっこやうんちをするのが当たり前。それが分からずに「かわいい」だけで飼ってはだめですよ。その辺を皆さんにも理解していただきたいです。

 

-「犬猫里親会」でペットをお迎えする時

えびさわ:10月に「犬猫里親会」を上形さんと一緒に開催します。
里親会でペットを飼おうと考えている方に対して、何か助言はありますか?

satooyakai_20221029のサムネイル上形さん:保護犬や保護猫がすぐ家庭になじむというのは難しいことなので、保護団体さんとの間でトライアル期間を設けて、その間に一緒に生活していけるかを試していただきます。きちんと動物との相性を見極めていただくことも大事です。

また、せっかくマッチングが成立しても、ペットが病気になったために手放したり、逆に飼い主側の事情で飼い続けるのをやめたりする方もいます。そんなことがないように、一度お迎えしたら最後まで面倒を見て、たとえ自分が倒れてもお世話をする位の覚悟を持っていただきたく思います。

えびさわ:やっぱり命を預かるわけですから、一緒に最後まで過ごす覚悟で飼っていただきたいものです。今度の「犬猫里親会」でもそういう方々に来ていただいて、1匹でも多くのワンちゃんネコちゃんの新しい飼い主が見つかるといいですよね。

上形さん:犬猫を飼いたいけど躊躇している方や、どうやって飼ったらいいのか分からない方もいると思うのですが、ちょっと足運んで頂けるだけでイメージが湧くのではないでしょうか。もしも飼いたいけどいきなりは難しいということであれば、愛護団体さんの中には、預かりボランティアさんを募集している所もありますよ。

えびさわ:預かりボランティアさんは、どんな活動をしているのですか?

上形さん:各団体さんは、既に預かっている動物の数をオーバーしているのが現状です。すると、自分のシェルターだけで置いておけない。そこで保護されている動物の性質を見て、ボランティアさんに預かっていただく活動です。期間については、いろんなケースがありますので一概には言えませんが。

えびさわいきなり飼うという方法ではなく、トライアルで様子を見ることもできますし、預かりボランティアに応募してみるのもいいですね。

上形さん:それも方法の一つだと思います。

えびさわ:少しでも多くのワンちゃんネコちゃんの命が救われることを願っているので、再び継続的に里親会ができたらいいですね。コロナ禍でここ数年は実施できなかったのが残念です。

上形さん:えびさわさんのおかげで今回は場所も決めていただけたので、引き続きよろしくお願いします。

 

-災害時のペットとの同行避難はどうする?

えびさわ:災害時のワンちゃんの同行避難について、どのように考えたらいいのか、アドバイスを頂けますか?同行避難対策として、これからも避難所を増やしていこうと区でも使命があるのですが。

上形さん:東日本大震災のような大きな震災が起きた時にどうするかについて、お話をしたことがありますが、犬にしても猫にしても、日ごろの飼育環境が一番大事になってくると考えています。小さいうちから甘やかして育てると、クレートやハウスに入るということができず、ワンワン吠え続ける。そうなると、大勢の中に入っていくのは難しいでしょうね。「ここに犬いたの?」と周りが感じるくらい大人しくしてくれる方が、安心して避難もできると思います。まずは、その子の一生の中でどんなことが起きるかを考えてしつけをしていく、それが大事です。

えびさわ:その子の一生の中で起きることを想定すると、災害以外にもいろいろとありそうですね。

上形さん:例えば(ペットが)病気で入院することも考えられます。入院しているときにケージに入れられてしまうと、耐えられなくなって治るものも治らなくなる。そんな場面を想定し、どんな時でも落ち着いていられるよう、日頃からの環境とトレーニングが大事だと考えています。

災害時の同行避難の話に戻りますが、避難所が増えていると思いますが、ペット同伴ができる場所なのかを明記することも大事です。熊本の地震の時も、大丈夫な避難所とそうでない避難所があったようです。

えびさわ:ペットがいるから避難所に行きたくない方も、熊本にもたくさんいましたね。車の中で飼っている方もいらしたので、ペットも大丈夫な避難場所をつくる事も大切だと感じました。これから頑張っていきたいと思います。

 

―飼い主さんへの指導も

えびさわ:上形さんとの対談を通して、飼い主さん側にしつけや飼育に関するきちんとした知識を持ってもらうことはとても大事だと実感しています。ワンちゃんのしつけだけでなく、飼い主さんに、しつけの手ほどきもされていると伺いましたが。

 上形さん:ほとんどが飼い主さんへの指導です。預かってトレーニングすると、ほとんどのワンちゃんがちゃんと言うこと聞いてくれますが、おうちに帰るとダメになるというのはよく耳にする話です。それは飼い主さんがなかなか覚えないからです。当社では飼い主さんも一緒に実践しながら指導をします、「こういう時はこうする」と。自分の犬だと甘やかしてしまうから難しい面もあるのですが、日頃から一番お世話をしている方だからこそ、身に着けていただきたいです。

えびさわ:そうですね。これからもぜひ、ワンちゃんネコちゃんのために、ますます良い環境づくりをご一緒にさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

ライター 乙部 雅子

文京区では、かわいそうな猫ちゃんを増やさないために、飼い主のいない区内の猫に対し、去勢・不妊手術の一部を助成しています。 ※事前の申込みが必要です


参考リンク

経済的な理由で、子ども達が夢をあきらめない支援(教育支援グローバル基金 橋本大二郎さん)

橋本大二郎さんとの対談風景

今回の『対談!えびさわけいこが聞きました』は、
NHKニュースキャスターや高知県知事を経て、
現在は「一般財団法人教育支援グローバル基金」の代表理事の橋本大二郎さんです。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
橋本さん:「一般財団法人教育支援グローバル基金」代表理事 橋本大二郎さん(元高知県知事)


対談の様子はこちらからご覧いただけます(約18分)

 

-恵まれない学生への支援について「ビヨンドトゥモロー」の活動内容

えびさわけいこ(以下えびさわ):まずは「ビヨンドトゥモロー」の内容を、教えていただけますか。

橋本大二郎さん(以下橋本さん):正式名称は「一般財団法人教育支援グローバル基金」ですが、覚えにくいので「ビヨンドトゥモロー(以下ビヨンド)」を通常の活動名にしています。

この団体が立ち上がったきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災でした。最も大きな被害を受けた岩手や宮城、福島の子どもたちの支援を目的として、若手の経済人が資金を出し合って財団を立ち上げました。
5年くらいしてから、被災者の支援だけではなく今の社会でいろんな問題を抱えているお子さんに合った応援をしていく形に変わりました。

支援の対象に選ばれた方は、活動期間の1年間は人材育成プログラムにも参加していただきます。1年ごとに対象者を新たに募集していきます。児童養護施設や里親に保護されているお子さん方が対象です。今年度でいえばどちらも12人ずつです。奨学金も少ない額ですが、お出ししています。

-ビヨンドトゥモローの人材育成プログラム

えびさわ:「ビヨンド」の看板である人材育成プログラムの内容について、教えていただけますか?

橋本大二郎さんとの対談風景

橋本さん:コロナになる前ですが、夏はアメリカのニューヨークやワシントン、秋には東南アジア各国に行くプログラムを組み、世界の人とつながる機会を提供していました。それ以外の時期は様々な分野の方に講演していただき、その内容についてメンバーで議論をして、「自分に何ができるか」を学んでいます。ディベートを繰り返す中で、世の中の評価も受けてきたと思います。
また、「ビヨンド」に来てくれる子どもたちが言うには、自分のこれまで育ってきた中で体験したことを学校でも話をしないし、逆にあまり周りに知られたくもない。

えびさわ:今の学生さんは昔に比べて、自分がどう受け止められるかを気にする人が多いかもしれませんね。

橋本さん:大学で授業をしていても、なかなか質問が出ない状況になりますが、特に悲しい経験をしたお子さんはその傾向が強い。だからこそ似たような境遇の子どもたちが集まって、安心して話せるような場を用意しています。最初は知らない人同士だから何となく気まずい感じなのですが。

えびさわ:相手の様子を探りながら、ですよね。

橋本さん:1日もいると高校生や大学生もすぐ打ち解けて、話すようになります。今まで育ってきた環境の中での、苦しみや辛さなどを。例えばもっとすごい経験をした仲間もいて、克服までの道のりなどの話をする中で「いつまでも暗い過去として抱えずに、もっと前向きに取り組もう」と感じ取っていてくれる点は、非常に有意義だと思うのですよね。ちょっと難しい言葉を使えば自己肯定感を育む機会にもなります。そういう状況にあるお子さんは「自分はダメだなぁ」と卑下していますので。

えびさわ:時代の影響もありますよね。

 

-子どもたちの視野を広げるプログラム

橋本さん:そんな子どもたちが自分に自信を持って、自分の道を見つけるようになります。
自分の道といえば、児童保護施設のお子さんに「将来は何をしたい?」と聞くと、ほとんどが「お世話になっている先生のように、恵まれない子どもたちのために働きたい」など、自分の見えている範囲で物事を決めてしまいがちです。えびさわさんもお父様の介護で気づきを得たとおっしゃっていますが、面倒を見てくれたお祖母さまを看取る経験から、看護師を目指したいとか。貧困とか虐待といった状況だと、なかなか出会いの場が少ないと思います。

えびさわ:そのために、限られた中での判断になってしまいますよね。

橋本さん:「自分は〇〇をやりたい」と想いを持つことはとてもいいことです。けれども、もっと多くの物を見れば、別の体験ができて、新たな視点が見えてきます。その視点を通して社会に貢献できて、自分がお世話をしたいと思った子どもたちやお年寄りに対して力を還元できる。その点に気づける人材育成プログラムにしていこうと。

えびさわ:すごくいいお話をありがとうございます。お金をあげるだけではなく、その子たちにいろんな経験をさせてあげて、新しい気づきを得てもらうのは大切なことですね。
私自身もそうなのですが。茨城県の田舎に育ったため、どんな職業があるのかがよく分かっていませんでした。父が教員だったので、学生時代は先生になろうと漠然と思っていました。東京に出てきてたくさんの価値観に触れる中で、様々な仕事を知ることができました。一方で貧困や虐待にあった子は、限られた世界の中で生きていく例も見てきました。そんな子どもたちを海外にまで連れてってあげたり、多くのディベートを経験させたりするのは、彼らにとって世界が拡がるきっかけになるので、素晴らしいですよね。感動しました!

橋本さん:ここ2年は海外も行けないままなのですが、今年度はこれまでのようにアメリカの大都市が無理だとしても、ハワイに行けたらと考えています。なるべく対面でのプログラムを維持しながら、夏以降のプログラムを組んでいきたいと思います。

-経済格差が学力格差に

えびさわ:人材育成プログラムを通じて、
子どもたちが新しい夢を見たり、これまでの自分の夢をさらに膨らませたりできるのは、素晴らしいことですね。
虐待やひとり親、また経済的な理由で自分の夢をあきらめた子どもたちが、似た境遇の子たちと話し合うことで、「頑張ろう!」と、心が明るくなったりするのもいいですね。

橋本さん:その点が一番大切なことだと思います。雑談をしながらコミュニケーションが取れるだけでも、重要なことではないでしょうか。
例えば相対的貧困の話でいえば、学力調査の結果などを見ても、全国の学力テストの正答率と子どもの家庭の所得との間には、見事に相関関係があります。「所得の高い層の子どもが所得の低い層の子どもよりも20ポイントほど高い正答率」といった厳然とした結果が出ているので、ハンデをなくしていくことがとても大切です。機会の不平等をなくしていくことが必要だな、と思っています。

えびさわ:現在文京区では、ひとり親家庭や貧困家庭に、いろんな企業さんからの協賛でいただいたお米などの食品を送る「子ども宅食プロジェクト」を実行しています。すごく喜ばれているのですが、もう1歩すすめて、そこに本や参考書などのちょっとした学習支援ができるよう、さらに拡大して欲しいと考えています。食べ物は大事ですが、心のケアや教育、スポーツのケアまで出来たらいいですね。なかなかそこまで今のところは進まないのですが。

-児童相談所の創設にむけて

橋本さん:インターネットで調べたら、文京区も児童相談所を創設すると伺いました。児童福祉法が改正されて、区の自治体でも造れるようになったので。必置義務がある訳ではないですが。

えびさわ:確かに造らないと宣言している区もありますが、文京区は実現に向けて動いています。

橋本さん:手を挙げて造ろうとされているのでしたら、それはぜひ進めたらいいです。調べてみたら日本の児童相談所の数は、人口がだいたい59万人につき1か所です。そして、欧米諸国ははるかに少ない人口あたりで1か所ずつあります。その位ケアが必要な時代じゃないかなと。文京区は幸いに新聞沙汰になるような虐待事件が起きていない。そんなに急がなくてもいい話ではないかと思います。

えびさわ:文京区も虐待通報や泣き声通報が急な勢いで増えてきております。児童相談所が必要だと私は考えています。

橋本さん:そのためにも、児童相談所という措置の権限もあれば、特別養子縁組を進める際に実の親に対して債務の申し立てなどのいろんな権限がある中で、相談所の存在は絶対に必要です。

えびさわ:一日も早く児童相談所を作ることが私の願いですが、そこにかかる職員が少ないので、他の区と取り合いになりそうです。職員の養成が文京区のひとつの課題で、今は区の職員をいろんな施設に派遣し、しっかりと訓練して立ち上げられるよう頑張っております。

―文京区の里親制度の現実

えびさわ:先ほど先生のお話の中に出た「特別養子縁組」も文京区では実施してはいるのですが、まだ毎年5~6組位でなかなか拡がっていきません。里親の子どもたちが体験を話す機会が年に1回ありますが、その体験談もみなさんがなかなか興味を持っていただけないので、もっと多くの人に知ってもらう必要がある、と私は考えます。

橋本さん:それは文京区だけではなく、日本全体が里親や特別養子縁組を重視しなかったこともあり、地域の中でそういう子どもたちや親にも出会わないので、実感も伴わない。それで、関心も高まらないのではと思うのです。これも海外との比較になりますが、欧米諸国に比べると、保護を必要とする児童の里親への委託率が、日本はもう圧倒的な低さなのですよね。今でも1%に満たない数字だと思います。全世界の動きが家庭での養育を原則とする形に切り替わっている中で、30年も日本は遅れて施設での養育を中心にしている。それをどう変えていくかですよね。
えびさわさんがおっしゃった里親に対しての関心が増えないと。いくら文京区の中で必死になっても、なかなか動かないのではないかと思います。文京区の中で出来ることを考えると、児童養護施設なり乳児院が区内でもいくつもあるかと思います。

さきほどなかなか児童相談所の職員を務められるスキルのある人がいないというお話がありましたが、施設の中には長くかかわっている方もいらっしゃる。

橋本大二郎さんとの対談風景

えびさわ:ベテランの養護施設の職員の方の豊富な経験に、感心させられます。

橋本さん:今の子どもたちが置かれた環境にどう対応していくかを、少なくとも他の人よりは、はるかにご存じです。スキルを更に高めるために国家資格が必要であれば、その中で新しい福祉の資格を作るべく運動する。それは文京区からでも十分できる事です。既に実際に活動されている方はいると思いますが、そういう方と連動していく。「なかなか里親5~6件で進みませんね、それでは何か予算を付けましょうか」と条件を付けて、それで動く類のものでもないと思います。

えびさわ:みなさんのノウハウを広げていきましょうという形で、子どもを真ん中に置いて、政策を作っていく感じでしょうか。

橋本さん:養子縁組だとか里親制度を増やしながら、その一方で、その子どもたちを守っていくセンターとしての児童養護施設、乳児院としての役割を作っていくこと。それこそ経営者の方や上層部にお話しをしていくことが、私は区議の方に必要な役割だと考えます。

えびさわ:ありがとうございます。既に経験している人がいる訳ですから、その人たちの声を広げて、さらにその人たちのスキルを他の人にも共有していくことで「幸せな子」を増やすという考え方になるのでしょうか。

橋本さん:そういうことですね、もっともらしいことを言ってしまいましたが。

えびさわ:やっぱり虐待や貧困で悩んでいる子たちが、自分たちと同じ環境の子が他にもいることに気づくのは、すごく大切ですね。

橋本さん:先ほどもお話しましたが、自己肯定感を強めていくことにも繋がります。

えびさわ:そのチャンスを橋本さんが作っている、ということで、私も一緒に何かできればありがたいですし、ぜひこれから何か手伝えたら嬉しいです。

 

-かわいそうな子どもを支援するだけではなく

橋本さん:もう一つだけ言っておきたいのは、今申し上げたような話をすると、「貧困とか虐待とかの状況にあるかわいそうな子どもを支援する事ですか?」とそう誰でも受け止めますよね。それはそのとおりです。ただ自分がこういった取り組みに10年近く関わって感じるのは、単にかわいそうな子を助けるだけではなく、社会全体として今取り組むべき事ではないのでしょうか。
無邪気に幸せだと思っている幼い子どもたちが、そのまま育っていける環境を創っていく。経済格差や学力格差に繋がるような不均衡な形ではなく、スタートラインはみんな平等に競争していけることが大切です。例えば「数学がとても駄目だから、それなら好きな英語を頑張ろう」など、競争の中で自分の得意・不得意に気づいていきます。

えびさわ:自分の好きな科目や、才能に気づくことさえできない子どもたちがいることは、社会にとって大きなマイナスですよね。

橋本さん:かわいそうな子を助けるといった視点は必要ですが、それだけではなく社会全体のために、そういった子どもたちにいろんな機会を与えて、自分たちの気づきを得てもらう。その支援は非常に大切なことでは。行政でいえばその養子縁組や里親をどうやったら実現できるかを検討していく。行政の取り組みと、「ビヨンド」のような民間の取り組みが相まって、子どもを社会全体で育てる、守るということに繋がっていけるのではないのでしょうか。

えびさわ:かわいそうな子たちをただ支えるのではなく、「この子たちが未来の日本を、文京区を創って行く」
そんな気持ちで周囲がサポートする感じでしょうか。今日はありがとうございました。非常に勉強になりました。

ライター 乙部雅子

文京区では「子ども宅食プロジェクト」を実施しています。
経済状況が食生活に影響するリスクがあるご家庭
約650世帯のお子さん対して、食品等を配送します。
是非、ご協力をお願いします。


参考リンク

これからの図書館が担う役割について(TRC代表取締役 谷一文子さん)

今回の『対談!えびさわけいこが聞きました』は、
株式会社図書館流通センター(TRC)代表取締役の谷一文子さんです。
これからの図書館が担う役割についてお話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
谷一社長:「株式会社図書館流通センター」代表取締役 谷一文子さん


対談の様子はこちらからご覧いただけます(8分27秒)

 

-図書館の役割とは 小石川図書館リニューアルに向けて

えびさわけいこ(以下えびさわ):谷一社長が考える図書館の役割は何でしょうか。

谷一文子社長(以下谷一社長):図書館とは、本来は人類の英知が詰まった場所だと思います。皆さんは図書館に、本を借りたり勉強しに行ったりしていらっしゃいますが、役割が少し変わってきていると感じます。新聞を見ていたら、引きこもりの方が図書館で勉強していた記事が載っていました。本や情報を使って、自己啓発ができるような場になっているのでは、と私は考えています。

えびさわ:谷一社長から大和市の公共施設「シリウス」を見せて頂いたのですが、図書館だけでなく、イベントの拠点にもなっていました。文京区の図書館もそうなって欲しいな、と強く感じました。区内には図書館が11箇所ありますが、現在の文京区の図書館についてどのような印象をお持ちですか?

谷一社長:以前はおそらく図書館界の方針もあって、区内では「近いところ、歩いて行けるところに図書館を」というコンセプトで建てられていると思います。ただ、少なくとも文京区には、多くの蔵書を持った大きな図書館が作られなかったので、そういう意味では居場所としての場が少ない気がします。現在は図書館に、居場所的なものや情報交換の場として新しいものを生み出す場所が、求められていると感じます。ぜひ文京区さんにも、そういう場が出来たらいいな、と願っています。

えびさわ:今度、小石川図書館が新しくなる時には、本を借りるだけの場ではなく、人で賑わう場所にできたらと希望しています。そこで未来の図書館をどんな風にしていったらいいか、アイディアがあれば、教えていただけますか。

谷一社長:ぜひ、複合化はしていただけたらと思います。先日、岐阜のメディアコスモスに行きましたら、1階は交流センターやイベント会場、2階が全部図書館なのですが、本当に楽しい場所でした。例えばですが、小石川図書館を建て替える時に、スポーツの施設やアリーナなどみんなが集える場所を、同じ施設内に建てるなどはいかがでしょうか。

えびさわ:交流の場としての図書館であってほしいですね!

 

-図書館の電子化

えびさわ:今はどんどん世の中の電子化が進んでいますが、図書館の電子化についてはどのようにお考えですか?

谷一社長:電子化はコロナの影響もあってすごく進みました。ウイルスの問題などで非接触型が望ましいのもありますが、資料としても便利だと思います。紙の本も優れてはいますが、文字の拡大や音声が出るとか、紙だけでは補えなかった機能が電子書籍にはあるので、両方とも図書館にあったらすごくいいですね。

えびさわ:障がい者の方も音で読めるし、高齢者にとっては字を大きく出来るのは、本当にいいことだと思います。ぜひ電子図書も増やして欲しいです。まだまだ文京区全体で数千冊程度ですが、どのようにお考えですか?

谷一社長:出版社さんのコンテンツを出すので、著作権をクリアしながら増やしているところです。出版社さんは最近ではかなり理解がありますよ。特に子どもの本を扱う出版社さんでは、学校などで使う朝読用として電子書籍を扱うようになりました。これから出版社さんにご理解いただければ、さらに増えると思いますよ。

えびさわ:ご理解が大事ですよね。ぜひそのように文京区もしていきたいですが、なかなか進まないところが悩みの種なので、そういう時はまたお力を貸していただけますか?

 

-臨床心理士から図書館の世界へ

えびさわ:話は変わりますが、谷一社長ご自身はどうして図書館流通センター(以下TRC)にお勤めになられたのですか?

谷一社長:これは本当に偶然です。病院の臨床心理士だったのですが、事情があって退職した時に、公務員試験がありました。たまたま資格を持っていた司書も募集していたので、試験に受かり、岡山市の図書館に勤めました。10年くらい経ってから主人が東京に転勤になったので、退職して引っ越しました。30歳を過ぎると公務員としての再就職が厳しい時代だったので、民間の会社も視野に入れました。TRCは公務員時代にお付き合いのある会社でしたが、たまたま営業が私の大学の先輩だったので、試験を勧められました。再就職先がなかなか見つからず、「しょうがないなぁ」と思いつつ臨んだら(笑)、受かったので入社しました。

えびさわ:でも本にはもちろん興味がおありですよね。

谷一社長:そうですね。そういう意味ではTRCに入った時も、最初はデータ部でした。データ部ではまさに分類や目録などデータベースを作る部署に配属されたので、司書時代の仕事内容がそのまま活きました。

 

-“チャンスがきたら、受け入れる”

えびさわ:データ部を見学させて頂いた時に、部署内には女性がたくさんいらっしゃいましたね。私も女性の一人として、同性の活躍は心強いです。私を手伝っているボランティアにも女性が多いので、何かコメントをお願いします。

谷一社長:先日ある方に言われたのですが、「チャンスが来たら、それは受け入れなさい」って。いつも私は目の前にあること、例えばデータ部から営業部に変わる時も、お断りせずに引き受けてきました。そうしているうちにいろんな道が開いてきたので、きっと「yes」と言ってチャンスを掴んでいけば大丈夫ではないでしょうか。

えびさわ:すごく心強い言葉です。この話は、機会があったら学生にも話して聞かせてあげたいです。私にも響いたので、何かチャンスがあれば掴みに行こうと思います。
最後に、将来の図書館、今後の未来図書館にはどんなイメージを抱いているか、教えていただけますか。

谷一社長:どんな人でも使える場所、例え図書館に足を運べない方でも「図書館」をキーワードにして、幸せを見つけていける――。そんな未来像を描いています。

えびさわ:さすがです!子どもたちにもメッセージを贈っていただけますか。

谷一社長:図書館はまさにSDGsを実現する場所だと思います。教育もありますが、それだけではなく環境や貧困のことなどを学べる場で、また実践する場でもあると考えています。私たちの会社としても取り組んでおりますが、図書館としてもっともっと豊かでサステナブルな世界が実現できたらいいですね。

えびさわ:とても勉強になりました。ありがとうございました!

ライター 乙部雅子


参考リンク

『命を飼うという責任』(星野奈美さん/NPOロンリーペット代表)

「対談!エビちゃんが聞きました」

今回の『対談! エビちゃんが聞きました』は非営利型一般社団法人ロンリーペット代表の星野奈美さんです。年間十数万匹も殺処分されていく動物達の現状と、それらを通じて命を飼うということの重さについてお話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
星野さん:「非営利型一般社団法人 ロンリーペット」代表 星野奈美さん


えびさわけいこ(以下えびさわ)
どうして「ロンリーペット」の活動を始めたのですか?

星野奈美さん(以下星野さん)
昔は野生動物保護をやりたいと思っていたんです。
幼い頃、カナダに住んでいたのですが、夕方の四時台に環境保全団体WWFが野生動物の番組を放送していて、そこで象牙のために密猟される象とかを見ている内になんとかしたいという気持ちが芽生えたのを覚えています。社会人になってから、自分の身近なところで出来ることはないだろうかと考え始めました。
実際に動物を保護することは難しいので、保護している人をサポートしようと思ったんです。

えびさわ
ロンリーペットは、里親を探しているペットたちを登録できるサイトで、ペットとペットを探している人とマッチングする、というものですよね。

星野さん
そうですね。いわゆる里親募集サイトをやっていて、そこから里親会を開くようになったり、リーフレットを作ったりするようになりました。
基本的に里親探しの施策をメインでやっています。

えびさわ
最初はサイトだけだったのに、なぜ“里親会”を開催するようになったのですか?

星野さん
ネットだけでやるのは閉塞感があると思ったので。保護動物にも団体にも会っていないので、自分たちがどう役に立っているのかもわからず、現場で実際に何がおこっているのかもわからないんです。
ちゃんと現実に会える場を設けることで、活動を円滑に進めることができるんじゃないかと考えて里親会を始めました。

えびさわ
私も何度か“里親会”のお手伝いをさせて頂きましたが、そのたびに自分たちの目の前でペット達の飼い主が見つかり、幸せになっていく動物たちを見ることができ、とっても嬉しく思いました。
本当に“里親会”を開催して良かったすね。

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星野さん
ええ。ウェブでは見ることの出来なかった部分を見ることができるので、会を開いてよかったなと思います。
啓蒙活動だけだと頭でっかちになったり、自分たち本意になってしまうと思うので定期的に会を開いていくのは、実際の保護現場を知ることができて、私たちにとってもいいことだなと思いました。
何のためにこの活動を行っているのか、再認識する場にもなっています。

えびさわ
定期的に麻布十番で里親会をやっていますが、だいたい一回でどれくらいの里親さんが決まるのですか?

星野さん
犬は1〜4頭、猫は4〜10頭位ですね。

えびさわ
なるほど、1頭で多く里親さんが決まるといいですよね。
今後、動物たちにとってどんな世の中になって欲しいと考えていますか?

星野さん
この活動をやらなくてもいいような世の中になって欲しいです。捨てられるペットの数は減ってはいるんですが、それでもまだまだいます。去年、動物愛護法が変わり、保健所が動物の引き取りを拒否できるようになったので、今後はもっと減っていくんじゃないかなとは思います。

えびさわ
私はね、ペットは家族の一員だと思うのです。
だから、家族として最後まできちんとお世話をしてあげねばならないと思うのです。
そして動物の人間も同じ命なのだから大切のしなくてはいけないという事を啓蒙して欲しいと願います。
星野さんが一番啓蒙していきたいことは何ですか?

星野さん
それが基本です。出来ないのであれば飼わないでほしい。命を飼う大変さをもっと理解してほしいです。

えびさわ
話はちょっと変わりますが、今のペット業界の問題点は何だと思いますか?

星野さん
売る側に規制がないことです。簡単に繁殖させ、売ることができるのが問題です。
私たちみたいな活動をしている人間が真っ先に求めることは、ペットショップの生体販売がなくなることなんです。
生き物を売るのであれば、もっと厳重な規制を設けた上で行ってほしいです。
繁殖に使われるだけ使われ、生みたいだけ生ませ、売れなかったら捨てられ、殺される動物たちを救えるのは、法律しかありません。

えびさわ
そうですよね。だいたいの人は、犬や猫を飼うとなると、ペットショップで買う以外にはあまり思いつきませんからね。
星野さんが言うように売る側の法律規制も重要ですが、生き物を売り買いするという認識から変えていかないといけないですよね。

星野さん
私たちは、犬や猫は貰うものだという風に変わっていくことを望んでいます。そのためにも小中学校の教育段階で知識として教えていって欲しいです。

えびさわ
そうですね。知識として教育することは重要ですね。
今のこの殺処分の現状を知らせると同時に、ペットも人間も同じ命だときちんと理解できる教育をしていくべきですよね

星野さん
日本で起きている動物の問題や、その問題を解決するために出来ることについて、教育してほしいです。
この世はすべて命でできている。私たちは自分が生きるために、他の命を犠牲にして生きているので、ペットだけでなく、畜産動物や実験動物、もちろん、野生動物についても、広く教育してほしいです。

えびさわ
確かにそうですね。今朝つけた化粧品の開発、さっき飲んだ牛乳、隣に座っている人のバック・・・・・・、私たちの生活を振り返ってみると本当に多くの命を犠牲にしていますね。命を大切にしていかなければならないということと同時に、感謝をしないといけないと、子供たちに子供だけでなくみんなに伝えていくべきですよね。

星野さん
そうです。ペットは人にいちばん身近な動物なので、飼ったら最後まで愛情を持って面倒をみる、この当たり前のことを、当たり前に行える日本になることが第一歩だと思います。また、毎日食べている私たちの食事等も、すべてが命です。
ハンバークを食べるために、牛は殺され、生姜焼きを食べるために、豚が殺されています。ひとつひとつを想像できるようになることで、命に対する責任感が持てるようになると思います。

えびさわ
私は「エビちゃん食育教室」を2ヶ月に1回ずつ開催しています。その時に「いただきます。」と言う言葉について子ども達に話をしています。
自分たちの命も、他の命に支えられているということを理解して欲しいと願いながら。

星野さん
はい、ほかの命を犠牲にして生きている以上、その命と引き換えに、自分が生きることができた今日という一日を大切にして欲しい。
さらに、犠牲そのものを少しでも少なくできるように検討して欲しいです。

えびさわ
命を大切にし、命に感謝し、一日一日を大切に生きていかないといけないですね。


『対談!エビちゃんが聞きました』の第6回は、非営利型一般社団法人ロンリーペット代表の星野奈美さんにお話を伺いました。
現在、エビちゃん事えびさわけいこさんも星野さんと一緒にロンリーペットの活動をしています。
今年(平成26年)10月18日に「護国寺」にて里親会を開催する予定だそうです。多くの里親がみつかると良いと思います。

僕の家でも最近犬を飼い始め、日々その世話を苦労しつつ楽しんでいます。犬や猫は人とは違う動物ですが、そうある前に一つの命です。
自然界におかれれば優劣のない平等な命です。ですから簡単に捨てたり殺したりしていいはずもありません。ペットではなく家族の一員として、どちらかが死ぬまで互いに仲良くやっていければそれはとても幸せなことだと思います。
僕もこれから飼い主とペットとしてではなく、家族としての関係を楽しく気づいていきたいですね。

撮影・文章 吉倉実功

『地域と大学の連携とコミュニケーション』(関賢二さん/白山哲理塾塾長)

「対談!エビちゃんが聞きました」

今回の『対談! エビちゃんが聞きました』は東洋大学白山哲理塾の塾長、関賢二先生です。特別職として文京区の様々なことに関わった経験もある関先生に、白山哲理塾の「知の拠点」という方針を通して「学ぶこと」についてお話しを伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
関塾長:東洋大学白山哲理塾の塾長、関賢二さん


えびさわけいこ(以下えびさわ)
関塾長は元々文京区にいらしたそうですが……

関賢二塾長(以下関塾長)
元々じゃないんですけどね(笑)。僕は、会津若松出身ですが、会津には企業が全くなかったので最初は福島県庁に入りました。
その後、難関の自治省(現総務省)の試験に受かりまして転職しました。当時、東京23区を基礎的自治体にするために、区長会が自治権拡充運動を行っていました。誰か法律に詳しい人が必要だということで、僕が自治省から推薦されて区長会事務局に派遣されました。
法改正に目途がたち国に帰ろうとしたら、当時の区長である遠藤区長から「文京区に来てくれ!」と依頼されました。

えびさわ
その当時の、区長会事務局の仕事って国や都との調整など本当に大変だったのでしょう。その難しい仕事をこなした事を見込まれて、文京区から離してもらえなくなったわけですね(笑)

関塾長
いえ、1度は帰ったんです。元々僕の希望は、地方制度と人材育成でしたので、国に戻って国家公務員管理監督者の幹部養成教育を行いました。
そんな折にたまたま文京区で問題が起こりました。文京シビックセンターの2期工事が反対運動で中断されるという問題です。遠藤区長が僕を呼び工事を再開させ何とかシビックホールを完成させてくれと依頼されました。建築費の見直しや設計を一部変更し議会の承認も取り1年後に完成させました。
毎日押しかけるマスコミや住民対応で本当に大変な1年でした(笑)

えびさわ
シビックセンターのもの凄い大功労者ということですね!

関塾長
そんなことはありません。そしてシビックセンターも完成し、今度こそ国に帰ろうと思ったら、今度は「文京区に残ってくれ!」と言われてしまったんです。
結局、収入役、助役、副区長として文京区の仕事をしました。初のミニバス≪Bーぐる≫を走らせたのも楽しい仕事でした。

えびさわ
毎日こんなに便利に利用させて頂いているコミュニティバス≪B~ぐる≫も、塾長の仕事にひとつだったのですね。ありがとうございます。

ところで、現在は行政と離れ大学でお仕事をしているわけですが、大学の仕事に就いて何か思ったことというのはありますか?

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関先生
大学というのは高等教育を行っているわけです、勿論学生と関係しているわけですよ。ですが僕は学生が4年間の学生生活を終えても、大学というのはそこに、その場所に存在し続けるのです。

去年、東洋大学は125周年のお祝いをしたのですが、ということはつまり125年ここに存在しているわけです。そしてこれからまた100年この場所に存在し続けるのです。学生は卒業しても地域との関係は切れません。だから大学と地域というのは密接な関係にならないといけないわけです。要するに大学と街との間に壁を作ってはいけないんです。アメリカの大学なんかを見ると、街の中に大学があって一体的に街と大学が形成されているわけです。

そういったことで東洋大学も壁を作らず、この白山の街の中に大学が存在する、という一体的な街づくりが必要なのではないかなと僕は思っています。だからそのためにも東洋大学は白山地域の中の「知の拠点」という形で存在するのだ、という考え方を持っています。
僕は大学の役員に井上円了の教育理念、いわゆる知(智)の連携が絶対的に必要だということを常に訴えています。

えびさわ
そうですね。学生は4年で卒業するけれど、大学はずっとここに存在し続けて行くのですものね。
そう考えると、もっともっと大学と地域は繋がりがあって欲しいですね。大学の財産である、学生や施設が地域の中に溶け込んで来てくれたらとっても素晴らしい事がたくさん起こると思います。

たとえば、地域のボランティアに学生が参加してくれてり、施設を大学が貸し出してくれたししたら、文京区はもっとエネルギッシュな区になると思います。

関塾長
だから、大学の知や施設を地域社会に貢献するということは、これからもここに大学が存在し続ける上でとても大切なことなんです。
特に文京区は区内に多くの大学が存在しているわけですから。大学が閉鎖的では地域や行政との関係も希薄になります。
それではダメですね、地域も行政も「大学の知」というのものをもっと使ってくださいとお願いしたいですね。

えびさわ
是非、使わせてください。「大学の知」を地域に拡散してください。この白山哲理塾を拠点にして。よろしくお願いします。
私は行政にいつも、文京区には17もの大学があるそれも文京区ならではの資産です。もっと大学に協力を仰ぎましょうと言っているんです。

関塾長
そういった意味で地域や行政には常に声を掛けています。
大学にはエクステンション課という公開講座や生涯学習専門の組織がありますが、現実には学者先生の研究発表の場所になっていて、内容が高度専門的過ぎて一般の方には難しく馴染まないという声が多かったんです。
そこで地域の人々が気軽に学びたいと思える寺子屋的塾が、大学公認で設立した「東洋大学白山哲理塾」です。誰もが参加できそして誰もが講師になれるそんな塾を目指しています。

えびさわ
誰もが生徒で、誰もが講師。とっても素晴らしいです!! 

関塾長
哲理塾の「哲理」という名称は、中野区にある哲学堂正門の哲理門から取りました。そして昨年建築された125周年記念館は東洋大学のシンボル哲理門を模して建てられています。
文京アカデミーの名称も僕が助役の時につけたものですよ。

えびさわ
そうなんですか!? 文京アカデミーという名称にはどんな思いが込められているのですか?

関塾長
どこの自治体でも生涯学習は教育委員会が所管してます。それはそれでいいのですが、役所の機構の中でやるわけですから、休日や5時以後は時間外勤務ということで柔軟な対応が出来にくい現状がありました。
そうすると区民本位の生涯学習が運営しにくくなります、それを解決するため思いきって所管を教育委員会から切り離し公益法人化して出来たのが文京アカデミーです。

えびさわ
なるほど!!夜間や休日も学習出来たら、お仕事している人も参加しやすいですね。
働きながらあるいは大学にかよいながら学習する、まさに生涯学習ですね。

関塾長
現在、行革の一環で民間業者に委託されてるそうですが、設立の理念だけは持って運営してほしいと思います。

えびさわ
民間委託だと何が問題なんですか?

関塾長
受託業者が社会教育の理念に基づき運営しているのであればいいのですが、単なるカルチャーセンターになってはダメだと思います。公的な生涯学習というのはカルチャーセンターじゃないんです、そこで学んだことをさらに世に広めていく、輪を広めていかなければいけないんですよ。
理念、哲学がなくただ人を集めて講座をやりましたというだけでは民間のカルチャーセンターと同じになってしまいます。

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えびさわ
なるほど。文京アカデミーや白山哲理塾で勉強したことを、世に広めて行く、誰かに伝えて行くわけですね。
知をどんどん拡散していく。それが次の人材を育てて行くということですね。

関塾長
知の輪を広げる。それが哲理塾の目的です。
国家は人なり、ある人が教育し、教育された人がまた誰かに教育していかなければ人材育成は成らないんですよ。東洋大学に「松下村塾」を作ろうと考えたのが原点です。
いくら1人が優秀でも、長い目で見たらその瞬間だけで、繋がらないわけです。
知の連携が必要になるのです「街・人・大学 無限の学び」が哲理塾の理念です。

えびさわ
ここで勉強した人が地域に出て、地域で他の人に話して……学んだことを自分の中に留めるだけでなく、外に出していくことが重要ですね。
お金で買う事のできない、知の輪の広がりこそが文京区にしいては日本の財産になって

いくわけですね。今日はありがとうございました。とっても勉強になりました。今日、関塾長から学んだことは私も広げていきます。

 


『対談! エビちゃんが聞きました』の第5回は、東洋大学白山哲理塾の関賢二先生にお話しをお伺いしました。
関先生とはエビちゃん(えびさわけいこさん)の「トゥモロー・ユー」という団体で非常にお世話になっています。トゥモロー・ユーとは、白山哲理塾と連携して色々なセミナーを開くのですが、僕は毎回その場に係として参加し講義を聞いています。
様々な、実用的なテーマを取り上げたものばかりで非常にためになるな、と毎度思っていますが、それだけではダメだというのが分かりました。自分だけが「ためになるな」と思うだけで終わらせず、他の人に伝えていくのが重要ですね。家族なり友達なりに講義で学んだことを伝え、僕を起点に一つ知の輪を広げていきたいです。

写真撮影・記事:吉倉 実功

《対談》『コミュニケーションについて』(掛札逸美さん/心理学博士)

新コーナーの「対談!エビちゃんが聞きました」

第4回目となる今回の対談のお相手は、エビちゃん(えびさわけいこさん)の筑波大学の同級生である心理学博士の掛札逸美さんです。
エビちゃんと掛札さんは、10月に東洋大学の白山哲理塾にて「リーダーコミュニケーション講座」を開催しました。来年(平成26年)1月にまた講座を開催する予定です。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
掛札さん:心理学博士の掛札逸美 さん


えびさわけいこ(以下えびさわ)
一緒に筑波大学の農林学類で勉強したのに、どうして“子どものケガ予防について”の勉強を始めたんですか?

掛札逸美さん(以下掛札さん)
大学を出た後、健康診断団体の広報室に勤めていたにですが、単に文章を書いているだけではこれから先やっていけないと思いまして。ちゃんと健康心理学というものを勉強しようとコロラド州立大学の大学院に留学したんです。
ところが大学院に行って半年の頃に、車にはねられ、それをきっかけに、健康心理学の中でも傷害予防(ケガ予防)の心理学、安全の心理学を学んだのが始まりですね。そして日本に帰ってきて、安全の心理学の中でも、子どもの安全を専門にして「産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター傷害予防研究チーム」という所に5年間、研究員をしていました。

えびさわ
車にはねられたって・・・・、どんな事故だったのですか。それにしても、自分ケガと子どもの安全予防では結構違いがありますよね。なぜ子どもの安全を専門に始めたのですか?

掛札さん
例えば、交通事故そのものは人間の不注意から起こるものですから、そう簡単に防ぐことはできない。けれど、事故によるひどいケガや死亡を防ぐことはできますね。
たとえば、シートベルトがあったり、チャイルドシートがあったり、自転車のヘルメットがあったりするわけです。これはどれもケガ予防であって、事故予防ではないですよね。私の事故の場合も、ヘルメットをかぶっていたら、頭のケガは防げたかもしれない。

事故後、よく周りを見渡してみると、ヘルメットをかぶっていない人がかなりいる。なんとかしよう、と思ってケガ予防の心理学を始めました。それが始まりです。

確かに今は、私は子どもの事故予防・ケガ予防を専門にしていますが、「子どもをどうにかしよう」ということじゃありません。視野も狭いし、判断力もないし、注意力も低い。子どもは、事故を起こす生き物、事故に遭う生き物、ケガをする生き物なんです。
だから、当然のこととして大人を教育しないと、変えていかなくてはならないと。

私がやっているのは要するに、大人を変える方の心理学です。安全の対象は子どもなのですが、実際のターゲットは大人。保護者であったり、社会であったり、保育士さんたちなんです。「うちの子どもは大きなケガなんてしない」「大丈夫」という思い込みが重大な事故を招いてしまいますから、そこを変えていこう、というのが私たちの研究ですね。

えびさわ
なるほど。ヘルメットをかぶらずに事故にあったご自分の経験から、「防げたこと」・「意識さえ違っていれば防げること」があるという事を広めていこうという事ですね。

子どもは自分ではケガを防げない、だから大人がしっかり子どもを守ってあげなくてはならない。
だから、だからこそ子どもの為に大人にきちんとケガ予防の教育していく事が必要であるわけですね!! なるほど、繋がりました。
まずは大人。子どもに接する保育の現場、保育士さんですね。
では、保護者や保育士さんなどの大人にケガ予防を教育して行く上で、重要なことや注意していることがあったら教えてください。

掛札さん
子どもの保育には、保育園と親との間でのコミュニケーションが重要です。
保育の大切さ、素晴らしさと同時に、子どもの集団の中で起こる危険についてもきちんとバランスよく伝えていかなければならない。ここでコミュニケーションが重要になってくるんです。

えびさわ
コミュニケーション。そうですね、保護者とのコミュニケーションは重要ですね。

では、コミュニケーションについては、いつ学んだのですか?

掛札さん
コミュニケーションというのは、心理学の中のあちこちに入っているのです。
コミュニケーションはあらゆる社会科学の基礎にありますから、日本に帰ってきたときに、どのように人に伝えるか、どう人を動かすか、そこの大切さを改めて感じましたね。

えびさわ
現在、コミュニケーションを取れない若者が増えていると言われていますが、私は若者だけではないと思うのです。
コミュニケーションを取れない大人も増えている気がします。この状況について、掛札さんはどうしていけばいいと思いますか?

掛札さん
コミュニケーションというのは、極端に言うと、自分自身のためのものですよね。
他人のためでなく、自分のため作りたい関係がある、変えたい状況がある、それをどうやったら手に入れられるか。そのためには、どうやって相手に正確に伝え、かつ納得させるかが重要なんです。「どうアプローチすれば相手が動いてくれるのか」を考えることが大切です。

日本人は全体的に、そして特に若い人たちはそれをあまりよく理解していません。本来そうは言っても、若い人たちのコミュニケーション力が低いのは当然です。なぜなら、本来、それを教えるはずの年上の人たち、親が教えられなくなっているのですから。

えびさわ
そうですね。だから、掛札さんと一緒に東洋大学白山哲理塾で開催している『コミュニケーションリーダー実践養成講座』は、多くの方に受けて貰いたいと思うのです。
若い人だけでなく、親となる年齢の30代、会社で中間管理職となり部下と上司に挟まれる40代の方々に受けてもらいたいですね。

掛札さん
そうですね。日本は、「上から下への流れ」が強い国ですから、上の人間がしっかり範を示していかないと下の人間はついてこない。
子どもと親も同じです。そう考えていくと、子どものコミュニケーション力を改善するにはどうしたらいいと思います。

えびさわ
親と子どもがしっかりコミュニケーションを取るという事ですね。
親と子どものコミュニケーション、親が子どもに話しかけてあげる事が重要なのではないでしょうか。
子どもは自分から話かけない事が多いです。場合によって、一日中誰とも会話をせずに過ごすこともあります。
それじゃダメですよね。親が話しかけてあげないと。『今日は何があったの?』と聞くくらいのことをしないといけないと思います。

掛札さん
ここ数年、アメリカで話題になっている「ボキャブラリー・ギャップ」という話があります。
語彙の多い少ないには貧富の差が大きく影響する。語彙を増やす一番の基本は、大人による反復と問いかけです。

「でんしゃだ~」「そうだね。電車だね。青い電車だよ。あ、今度は何が来たかな」「でんしゃ! あお、でんしゃ」「そうだ、青い電車だ」…、これが反復や問いかけですね。こういった経験を、特に3歳までの間にどれだけ与えられるか、が重要です。本を勝手に読ませたり、スマホを与えたりするのではなく、親が自分の声でどれだけ「反復」「問いかけ」「会話」を子どもと行えるかが重要。

米国の場合、なぜそれが貧富の差によるかというと、貧しい人たちは忙しいから、それだけです。
じゃあ、日本はどうかといったら、貧富の差とは無関係に、保護者が忙しすぎる。もちろん、保育園でもそういう教育はしていますが、やはり親自身が忙しさの合間を縫ってでも、子どもたちとこういった時間を持つべきですよね。
米国の研究でも、「貧しくても子どもとの対話の時間を持っている保護者の子どもは、語彙が多い」という結果が出ていますから。

えびさわ
語彙が少ないと、人とのコミュニケーションもうわべだけとなり、深い話ができなくなるということですね。
だから保護者は、子どもが語彙を増やしていけるように子どもに話かける事が重要なのですね。

掛札さん
深い話というのは何かというと、「自分が伝えたいことをきちんと伝えられること」です。
たとえば、今自分が怒っているとしても、語彙が少なかったら「ムカつく」としか表現できません。
自分の心の中を掘り下げる言葉もないし、人に伝える言葉もない。

えびさわ
なるほど。なぜムカついているのか、何にムカついているかなどを的確に表現できないのですね。
それでは、相手にムカついているから私はこう改善して欲しいという事など、とうてい伝える事は無理になりますね。

掛札さん
アメリカでつい最近できた面白い研究結果があって・・・・。軽い大衆小説を読んでいる人と重い文学作品を読んでいる人とでは、他人の感情に対する感受性に大きな差が出るそうです。前者はキャラクターの心情が単純に描かれている一方、後者は複雑に描かれているかだと解釈されています。

重い文学作品では、何がその人物の心の奧に隠れているのか、というのを考えなくてはなりませんから、そういう習慣がつくのでしょうね。

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えびさわ
なるほど。そうやって実際のコミュニケーションにおいても相手が何を考えているのかな、相手が言っている言葉の裏には何があるのかなというのを考えていけばコミュニケーションのできる子が育つという事ですね。

掛札さん
大人になってからそのスキルを身につけることもできますが、やはり子どもの頃からのほうが大事ですね。

えびさわ
コミュニケーションというのは自分のための学問であり、自分のためのスキルとして身に付けて欲しいですね。
コミュニケーションスキルは、社会人になって仕事を円滑にするために、勉強するものではなく、子どものうちから、家庭の中で学んでいるべきものであり、それを子どもに伝えるためには、親・保護者がちゃんと勉強しなければならない、ということですね。


『対談! エビちゃんが聞きました』の第四回目は、心理学博士の掛札逸美先生にお話しを聞きました。
掛札先生はエビちゃん(えびさわけいこさん)が『Tomorrow you(トゥモローユー)』という団体で行っていた『コミュニケーションリーダー実践養成講座』の講師でもあったので、今回はコミュニケーションの話を中心にして頂きました。

ボクは大学に入ってからコミュニケーションの重要さを思い知らされました。
高校までと違い、大学にはクラスというものがありません。一応形としては存在しますが、クラスメートが一堂に会してホームルームをするなどと言うことはありません。ですから自分から行動していかないと友達は増やせないのです。
今回の話や『コミュニケーションリーダ実践養成講座』での話から、もっと自分のコミュニケーションスキルを磨いていき、友人関係を円滑にしていきたいなと思いました。

写真撮影・記事:吉倉 実功

《対談》フジッコの須田優美子さんに伺う『昆布と豆のいい話』

新コーナーの「対談!エビちゃんが聞きました」

今回は、フジッコ株式会社の須田さんと対談をさせていただきました。
普段のお仕事の内容や、昆布のことや豆のことなどを色々教えていただきました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
須田さん:フジッコ株式会社の須田優美子さん


えびさわけいこ(以下えびさわ)

どうしてフジッコさんに入社したのですか? フジッコが大好物だったとか(笑)。
それとも「食」に興味があったのですか?

須田優美子さん(以下須田さん)

管理栄養士養成の学校に入っていて、食に興味がありました。
でも、私は趣味がいろいろあり、様々な職種も受けてみました。けどやはり働くなら「食」に関する仕事に就きたいな、と思ったわけです。せっかく管理栄養士の資格も取ったんですし(笑)

えびさわ
そうですよね。せっかくの勉強した事を活かさないとね。でもなぜ管理栄養士の資格を取ろうと思ったんですか?

須田さん
子どもの頃、食物アレルギーがあって大変だったんです。
でも、母親が食事に関しては毎日一生懸命作ってくれて、そのおかげで健康でいられたので、バランス良く栄養を取ることが重要だという事を身を持って実感しているんです。
それに、働く人や、頑張っている人の原動力になるのは「食べ物」だと思うのです。
ですから、「食」についてきちんと呼びかけたり伝えたりしていきたいと思ったのです。

えびさわ
私もアレルギーの病気になった事がきっかけで、食について興味を持ちました。同じですね。
「食」はカラダの基本だし、元気の源ですものね。健康なカラダがあってこそ健やかに毎日を送れるわけですものね。今、メインやっているのはどんな仕事ですか?

須田さん
料理教室と、営業支援です。営業支援と言うのは、営業さんがスーパーさんに商品を提案しやすいように、フジッコの商品を使ったメニュー開発や、それをお店で使えるようにポスターにするなど、多岐に亘っていろいろ行っています。

えびさわ
gokokuji_01.jpgフジッコさんの商品と言えば、やはり「昆布」と「お豆さん」がメインですよね。
そうそう、先日も私の開催している「エビちゃん料理教室」にいろんなメニューを提案して頂きありがとうございました。
とろろこんぶで「キャラ弁当」なんてびっくりしました。子ども達もとっても喜んでいました。本当にありがとうございました。

須田さん
私たちもフジッコファンの子ども達が増えてくれたら嬉しいので、一緒に開催出来てよかったです。
フジッコは元々『富士昆布』というとろろ昆布販売から始まった会社だったんです。それが時代と共に『フジッコ』という親しみやすい呼び名に変わっていったという歴史があるんです。

えびさわ
『フジッコ』ってとっても親しみやすい社名ですね。でも、こんぶと言う音が消えてしまったのはちょっと悲しいかも。昆布は、日本を代表的する「うま味」成分ですものね。

須田さん
ところで えびさわさん、とろろ昆布の作り方知ってますか?

えびさわ
昆布を削るんじゃないですか?

須田さん
普通の昆布を何重に重ねて、その断面をスライスしていくんです。
そうすることでいろいろな昆布が含まれた“とろろ昆布”になるんです。だからとろろ昆布は縞々に見えるんです。一種類の昆布ではなく、何種類もの昆布を混ぜているので、様々な栄養が溶け出しやすくなっていてとても身体にいいんです。
そして、さらに栄養が出やすいように0,02mmの薄さに削っているんですけど、これは当社の自慢の技術です。

えびさわ
薄くすることで栄養を吸収しやすくするんですね。昆布には、カルシウムや食物繊維がたくさん含まれているんですよね。そう考えるとお通じにもいいんじゃないですか?

須田さん
そうですね。女性の美容には、腸内環境はとても重要です。
とろろ昆布を続けたおかげで、お肌も明るくなったという方もいらっしゃいます。女性にとってはそこが最も嬉しいところだと思います。

えびさわ
じゃあ毎日食べないと(笑)。お豆も身体にいいですよね

須田さん
豆にも食物繊維やタンパク質、あとは種類によってイソフラボンやアントシアニンも入っているので、いろいろな種類の豆をバランスよく食べるのがいいですね。だからうちの会社では、皆さんの健康のためにいろいろな種類の豆製品を出しているんです。

gokokuji_02.jpgえびちゃん
そう言えばこの間のエビちゃん料理教室で教えて貰った『黒豆きなこ和え』はとても簡単で美味しかったです。
黒豆にきなこをまぶしただけなのに、全く違う味になり、まるで新感覚のデザートでした。
こういう新しい提案で、もっともっとフジッコファンを増やしま
しょうよ。
私もいろんなメニューが知りたいです。

須田さん
はい。簡単にできる、というのがモットーなので。
切るだけ、混ぜるだけといったワンステップでできるようなレシピをこれからも提案していきますね。

えびちゃん
で、今までで一番のおすすめってなんですか?

須田さん
やっぱり今えびさわさんの言った『黒豆きなこの和え』ですね。

えびちゃん
最後になりますが、皆さんに食生活でどのようなことを気にして貰いたいですか? また、どんな商品の開発やメニュー提案をしていきたいですか。

須田さん
新しい商品開発も重要ですが、今のフジッコの商品をもっと知って頂きたいです。私もそうですが、一人暮らしの働く女性はついつい食生活がおろそかになりがちだと思うので、そういう中で豆とか、ひじきなどの食物せんいや鉄分が豊富な物を食べるようにして欲しいです。フジッコには、そういったものを手軽に取り入れることのできる商品が沢山あるのです。

えびちゃん
そうですね。いつもの食卓に豆やひじきを一品加えることがポイントですよね。今日1日だけ食に気を遣うのではなく、毎日の食を考えて欲しいですよね。その為にも手軽の取れる商品をこれからもよろしくお願いします。


『対談! エビちゃんが聞きました』の第五回目は、株式会社フジッコさんの社員である須田優美子さんにお話しを伺いました。
忙しい現代人の食生活は乱れがちですが、食はあらゆる行動の原点!
きちんとしたものを食べて元気に日々を過ごしていきたいです!
大学の友達にも食生活が乱れがちな人がいるので、是非彼らに豆と昆布のすばらしさを伝えていきたいと思います!

写真撮影:刈谷 学  取材協力・記事:吉倉 実功

《対談》護国寺 岡本貫首に伺う「護国寺の歴史」

新コーナーの「対談!エビちゃんが聞きました」

第4回目は、平成25年8月15日、護国寺にて
真言宗豊山派大本山護国寺 第五十三世貫首 岡本永司さまと対談させていただきました。
お話(対談)がとても盛り上がったので、3回に分けてご紹介いたします。

今回、護国寺の第3弾は「護国寺について」のお話しを掲載します。
護国寺 第1弾「お盆はお母さんの日なんですよ」
護国寺 第2弾「ご先祖さまと自分の命」も読んでみてください。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
岡本貫首:護国寺貫首の岡本永司さん
敬称は省略させていただきました。


えびさわけいこ(以下えびさわ)
岡本貫首は、護国寺の何代目の住職にあたるのですか?

岡本永司貫首(以下 岡本貫首)
元禄の手前あたりに護国寺は建てられまして、その頃から数えますと、私が「53代目」の住職です。

えびさわ
53代! 長い歴史と伝統があるのですね。岡本貫首になられてから、護国寺は今まで以上に地域の方々に開かれたと伺ったのですが。

岡本貫首

護国寺自体は昔から開かれたお寺だったようです。お寺の中でお相撲会が開催されていたという記録も残っているのですよ。きっと、護国寺で祭っているのが観音様だから、誰でも来なさいということだったんでしょうね。だから護国寺の門は、夜でもあえて閉めないのです。

江戸時代頃には、お花見などの時にはいろいろな店がでたりしてね、随分賑わったようです。音羽通りってあるでしょう? あそこには料亭などが並んでいたそうですよ。

えびさわ
護国寺は、今も昔も その時代その時代で地域と繋がってきたのですね。それにしても、音羽通りに料亭があったなんて知らなかったです。

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岡本貫首
そんな立派なものでも無いけれどね。
ちょっとした食事をそこでし、それからお参りをする事が、当時盛んだったようですよ。

そうそう、明治初期には、小さな興業などもやられていたそうですよ。
昔は今みたいに娯楽施設が全然ないから、みんなが集まって来たんですよ。

えびさわ
そうだったんですか! 徳川様の作ったお寺だから、堅苦しいものだと思っていましたが、地域の方々が集まる場所、そして心をいやす憩いの場所だったのですね。

岡本貫首
ここには徳川家のお墓はありません。
徳川五代将軍綱吉様のお母様である圭昌院さまが、何とか自分の息子が将軍の職につけますように、という思いで出来たお寺なのです。
子に対する母の思いがお寺になったわけで。
だから綱吉公は、随分と親孝行な方だったそうです。普通将軍職に就くと、親子であれ別々に暮らすようになり関係が疎遠になったりするのです。
けれど、いろいろな記録を見てみますと、綱吉公がお母様の元を訪れて肩を揉んだという話が残っているんですよ。

えびさわ
ここ護国寺に、綱吉公はいらしたことがあるのですか?

岡本貫首
何回も訪れていますよ。普通なら将軍様だけだったり、圭昌院さまだけだったりですが、二人ご一緒にお参りにいらしたそうです。そして、境内で仲良くお話しをされたそうです。

また圭昌院様は大変立派な方で、仏教に対する深く厚い信仰心がり、京都の寺々 法隆寺や興福寺などにも沢山ご寄附をしているんですよ。

えびさわ
そうなんですか。桂昌院さまについては、綱吉公のお母さんという事と、「玉の輿」の語源となった方という事くらいしか知らなかったので、信仰心が厚かった方と知って驚きました。

岡本貫首
特に興福寺は、経済的に大変疲弊していたのを、そのお金のおかげで今現在まであり続けることができているわけですよ。そう考えると圭昌院様は日本文化の恩人であるのですよ。

えびさわ
昨年、興福寺に行ってきましたが本当に素晴らしかったです。
こうして今の時代に、当時の文化に触れる事が出来たのは桂昌院様のお蔭だったのですね。感謝しなきゃ!!
そういえば、私も参加させて頂いている毎週日曜日の朝の“修養会”は、どんなきっかけで始まったのですか?

岡本貫首
これはね、戦後まで遡ります。
その頃に護国寺の住職をしていらっしゃったのは佐々木御前様でした。当時はだいぶ世の中が荒れていたのでしょう、なんとかみんなの気持ちを落ち着かせるために「観音様をお参りさせて貰えないでしょうか」と、町の有力者の方が三、四人で護国寺やってきたのです。

そこで佐々木住職は、「毎朝七時半にそういう会開きますから、毎日間違いなく来るようであれば許可しましょう」と言ったそうです。それから毎朝六時にはお堂を開けて、お経を唱えたのです。それで日曜日には普段来ることのできない人のために9時から会を開くことにしました。
それが“修養会”の始まりですね。もうかれこれ七〇年近く経っています。

えびさわ
70年、すごいですね!!
佐々木住職との約束を、ずっと守っている地域の方も、素晴らしいです。
その仲間に入れていただき、日曜日に“修養会”に参加させて頂けること本当に嬉しいです。

これからも、ずーっと、ずーっとこの歴史と伝統が続いて行くのですね。

今日は、本当に長時間に渡りいろいろなお話を聞かせて頂いてありがとうございます。

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護国寺の岡本永司貫首へのインタビューは、三回にわたり掲載させて頂きました。
第3弾は、護国寺についてです。僕が生まれた文京区にあるお寺なのに、誰が作ったのかもわからない。近すぎるがゆえに知らないという事はよくあります。

遠く離れた地の歴史に思いをはせるのもいいですが、まずはもっと地元の歴史について知るようにしていこうと思います。

僕が生れ、僕が育った文京区の事を、えびさわけいこさんのボランティアを通してもっと知っていきたいと思います。

写真撮影:刈谷 学  取材協力・記事:吉倉 実功

《対談》辻衆議院議員に伺う「こらからの留学制度などについて」

「対談!エビちゃんが聞きました」

今回は、衆議院議員の辻清人さんと対談させていただきました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
辻:辻清人衆議院議員さん
敬称は省略させていただきました。


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えびさわけいこ(以下えびさわ) 
どうして政治家を志そうとおもったのですか?

 

辻清人衆議院議員(以下辻)
僕は、四歳から十八歳までをカナダのバンクーバーで暮らしていました。

物心ついた頃から海外にいたのです。そういう状況の中でしたから、自分が何人であるかを若い頃から意識しました。多民族国家の中にあって日本人という事を意識できる環境にいたことがまず一つです。

もう一つは、中学一年生の頃にさかのぼります。カナダでは、中学一年になると学校でディベート(討論)の授業があります。その授業である日「日本への原爆投下」についてディベートを行いました。

それまでは僕は、あまりの日本人だという意識はなかったのですが、このディベートをきっかけに日本人である事を強く意識するようになりました。

授業では、「日本への原爆投下について」の賛否をクラスを半分に分けて話し合いが行われました。
その時は、日本に原爆を落とした事はしかるべき処置だったのだという気持ちが先生を含めて当たり前の浸透していたように感じました。
しかし、僕は自分の国である日本がそんなに悪いことをしたのかと不思議なくらい感情的になり「なぜ日本が原爆を落とされるべきだったのですか」と先生に質問をしました。先生の回答は「当時の日本の政治が悪かったからだよ。」だったのです。戦争中にどっちが言い悪いなんて当時は簡単に言える状況ではないでしょう。
けれど13歳の僕は、日本の政治が悪かったから大勢の人が死んだ、と理解したんです。そして単純に、なら僕は日本に戻ってよい政治家になり、原爆のような悲惨な出来事は二度とまねかないようにしようって思いました。

えびさわ
普通、13歳で政治家になろうとあまり思いませんよ。それだけ日本への思いが強かったのですね。
そして13歳で決めたことを実現した事は凄いですね!!

原爆の投下は、私も正しい事だとおもいません。
それを正として教育することにも怒りさせ覚えます。しかし、見方や見る方向によっていろいろな意見があるということも考えていかなくてはいかないのでしょうね。そして、そのギャップをどう話し合いで埋めていく事が必要なのだと思います。

海外で生活が長い辻議員に、このグローバル社会での外交について期待していますね。

辻議員は、ご自分での海外経験から留学生制度を推進していと伺っています。
最近日本に大学生の留学が減っているようで、私も残念に思っているのですが・・・・。


外国に行ってその国の人と衣食住を共にすることで文化や風土、いいところ悪いところを客観的に見ることができると思います。そして日本の良さも見直すことができる。そういうまとまった時間を取れるのが学生時代の特権じゃないでしょうか。
外国で暮らすという経験をしたうえで社会にでることが、自身の引き出しを増やすことに繋がると思うし、それが日本の肥やしになると、僕は思うのですよ。

えびさわ
留学をきっかけに、海外から日本のことを改めて見ることが出来き、日本に良いところを知り、さらに辻さんがいつもおっしゃっている『愛国心』が湧くかもしれませんね。


でも湧かなければ湧かなくてもいいんですよ。
日本が嫌いになってその国に住む人もいるでしょうし。ただ、外に出て行って日本の良さを再認識している人は多いですから、これからも増えていくのではないかなと思いますね。

えびさわ
今後そういった留学生制度についてどのように政治ですすめていきたいとお考えですか?


そうですね。
高校から大学にかけてのそういった制度の補助、国が財政的な補助をするというのが一つとしてあります。あとは日本の大学と海外の大学との間で単位の互換制度を増やすことです。

でもやっぱり外に出る前に日本の事をしっかり学んでほしいですね。
外国で自分の国のことに答えられないというのは恥ずかしいことですし、今現在暮らしている国のことが分からないというのは、自分の家の庭で迷子になるようなものですから。

えびさわ
そうですね、外から見て日本の良さを知る事も大切ですが、まず日本の事を勉強し留学した国で「日本とはこんな素晴らしい国だ。」と誇りを持って語って欲しいですね。
私たちは、子ども達が誇りを持てる国に出来るよう、大人としてそして政治家としてしっかり働いていかないといけないですよね。

他にこれから政治家としてしていきたいことはありますか?


僕はやっぱり若い世代のために政治をしていきたいですね。

えびさわ
若い人のための政治? 


今七〇歳の方はあと三〇年経てばいなくなってしまうわけですが、我々の世代は残ります。
その残る世代のために“たすき”を渡していかな、と。それが僕の使命かなと思います。

えびさわ
具体的にはどういうことですか?


生きていく上での選択肢を増やしていきたいな、と思います。
固定観念のようなものに縛られて、人とはこうあるべきとなってしまっている考え方を変えていきたいです。人とはこうありたい、という風に。選択肢が増えれば必ずこの国はよくなりますよ。

えびさわ
それぞれの個を認めていく、様々な生き方を認めていくということですよね。


今まで日本の柵の中で生きてきた人々がそういう変化をもたらすことは出来ません。
しかし幸か不幸か日本の教育を受けていない僕なら変えることができる気がするのです。

えびさわ
世界の中で日本がどうなったらいいとおもいますか?


世界一の国でしょうね。国民の全てが自分の国を愛することができる国というのは幸せだと思いますよ。留学することで自分の国が良い国なんだ、と思える一つのきっかけになればなと思います。


『対談! えびちゃんが聞きました』の第三回目は、衆議院議員の辻清人さんに留学生制度についてのお話しを伺いました。

 グローバル化が進むなか、留学し海外の良いところ悪いところを見つけ、そして改めて日本のことも客観的に見てみる。
そうすることで僕のような学生は社会に出たときに出来る物事が増えます。是非、学生という時間のある期間に一ヶ月でも一週間でも海外で生活してみたいと思いました。

(写真撮影・記事)吉倉 実功

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《対談》護国寺 岡本貫首に伺う「ご先祖と自分の命」

新コーナーの「対談!エビちゃんが聞きました」

第1回目は、平成25年8月15日、護国寺にて
真言宗豊山派大本山護国寺 第五十三世貫首 岡本永司さまと対談させていただきました。
お話(対談)がとても盛り上がったので、3回に分けてご紹介いたします。

《第1弾に引き続き、護国寺貫首の岡本さまにお話しを伺ってきました》

前回は母の日についていろいろな新発見がありました。では2回めの対談をお楽しみ下さい。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
岡本貫首:護国寺貫首の岡本永司さん
敬称は省略させていただきました。


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えびさわけいこ(以下えびさわ)
日本のお盆が、実は仏教で定めた、母の日だったんですね(対談1話をご覧ください)。
でも、現在の日本では、お盆にご先祖様が帰ってくるというように伝わっているのはどうしてですか? 

岡本永司貫首(以下 岡本貫首)
それはね、日本の伝統の考え方と一緒になってしまったんです。お母さんにはお母さんがいて、そのお母さんにもお母さんがいる。つまりご先祖様のお母様も全部、という意味なのです。
自分のお母さんだけじゃなくて、おばあちゃん、曾おばあちゃん、曾々おばあちゃん……。
そういう方々も皆供養しなさい、となったわけ。

えびさわ
今度父のお墓参りに行くのですが、その時はお父さんの供養だけではなく、おじいちゃんやおばあちゃん、そして先祖の皆様に、「いつ見守ってくれてありがとう」と言ってきます。

岡本貫首
そうです。その気持ちでお線香をあげてくれば、えびさわさんはもっと素晴らしい女性になれますよ(笑)

えびさわ
はい(笑)。では、来週のお盆にさっそく言ってきます。

 岡本貫首
どう考えても先祖様の遺伝子が自分には流れているわけですからね。
今ではDNAとか遺伝子とか言っていますが、それを仏教では、「縁」と呼んでいまして。「縁」がずっと繋がっているんですよ。親子の縁、夫婦の縁、それらが繋がって、自分がいるわけです。えびさわさんにも繋がってきているんですよ。

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えびさわ
先祖からの「縁」によって今の私があるのですね。

岡本貫首
自分は今ピラミッドの一番上に立っているわけです。
裾はずーっと広がっているのです。一人ひとり、みんながそうなのです。
だから、命は大事なのですよ。

えびさわ
「私は一人で生きてるんだ」って言う人がいるけど…。
ひとりはあり得ない得ないわけでね。自分が生まれる前に親がいて、そのまた前に親がいて…。

岡本貫首
よく、七世の父母、六親眷属(ろくしんけんぞく)などといって供養します。七世の父母、つまり七代遡った両親。どれくらい居るかというとね、七代遡ると二百万人くらいの人がいるんです。
両親がいて、両親の両親がいてその両親がいて……という具合に。

えびさわ
…………数え切れない多くの方々に、私たちは支えられているのですね。顔も知らないご先祖様の「愛」が、私たちの中に流れているなんて、なんだか不思議です。
こうして受け継いだ「命」を、ひとりひとりが大切にし、感謝をしてしっかりと生きていかなければと、改めて思いました。

岡本貫首
だから、本来はさっき話したように、目連(モクレン)さんのお母さんの供養だったのですが、先祖様が戻ってみえるという日本のお盆は、お母さんの供養だけではなく、「縁」で繋がっている先祖様の供養をするんですよ。

えびさわ
初めて知って勉強になりました。そういえば春と秋にお彼岸がありますが。
お彼岸は仏教ではどんな意味があるのですか?

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岡本貫首
彼岸というのは、向こう岸を差します。向こう岸というのは悟りの世界、こちらの岸が娑婆(しゃば)世界。娑婆とは、悩みや苦しみのある世界です。
そこを抜け出して向こう岸に行くための行をするのがお彼岸なのです。
だからお彼岸というのは先祖の供養であると同時に、自分の行いを見直す日でもあるのです。
一年のうち二週間くらいは、その事を頭に置いて過ごしなさいということです。お彼岸は、当然先祖の日でもありますから、ご先祖様を供養し、自分の修行を見守っていただこうというわけです。

えびさわ
向こう岸に行くために、自分の行いを振り返り、反省し改めるための日ということですね。

岡本貫首
そう。改めることはなかなか難しいですけどね

えびさわ
以前に、貫首さまから、「怒らない」というお話を聞きましたが、実践するのが難しくて。

岡本貫首
「怒らない」というのは、怒っちゃいけないということではなく、いつまでも根に持ってはいけない。
いつまでも根に持っていると、凝り固まってしまうから、それを解していきましょう、ということです。

えびさわ
なるほど。確かにそうですね。根に持ってしまうと、そこから進展もなければ、新しいものも生まれてきませんものね。また、勉強になりました。

仏教というと、どうしても難しい「お経」というイメージがありましたが、毎日の生活の中の身近なことなのですね。
もっと多くの人に、貫首さまの法話を聞いて欲しいです。きっと毎日を元気に生きるヒントになると思うんです。

岡本貫首
聞いて欲しいというより、仏教にはこんな生き方、考え方があるんだよ、っていうのを、知っていただきたいな、と思っているのですよ。

えびさわ
ところで、今「道徳」という時間が減っているようです。
法話などを聞くことで子どもたちが、人を気遣う気持ちや、自分の行動を改める気持ちを学んでくれたらいいな~と思います。

岡本貫首
「道徳」というのはいわゆる、一般的に守るべきものを指しますね。
ところが仏法は、広い心で物事を見ていく、と言うことを説いているのです。

えびさわ
「広い心」。心に刺さる言葉ですね。自分の事を振り返って、広い心で、相手の立場に立って物事を考えていきたいですね。


第二回目の『対談!エビちゃんが聞きました』は前回に引き続き護国寺貫首の岡本永司さんとのお話しでした。

普段自覚することはあまりありませんが、僕がここにいるのは、それ以前の先祖様の誰かが欠けてしまっていてはあり得ないことです。幾つもの命に支えられて、僕がいまあるのだと言うことを胸に刻み、大切に日々を過ごしていきたいと思います。

写真撮影:刈谷 学  取材協力・記事:吉倉 実功

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