今回の『対談!えびさわけいこが聞きました』は、体育塾でお世話になっている「スポーツひろば」代表の西薗一也先生です
えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
西薗先生:「スポーツひろば」代表 西薗一也先生
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-「スポーツひろば」を立ち上げた理由
えびさわけいこ(以下 えびさわ):西薗先生は文京区で10年以上、私たちがやっている体育塾の先生をしていただいております。まずは西薗先生が「スポーツひろば」を始めた理由を教えてください。
西薗一也先生(以下西薗先生):第一の理由は、体育が苦手な子を救ってあげたい気持ちがあったからです。そもそも僕自身も体育を仕事としていますが、運動を好きになった理由を振り返ってみると、良い先生との出会いがそこにはありました。で、国語とか算数とか他の科目でも、好きになる理由の中で同じことが言えるんじゃないかな。
えびさわ:先生の存在って、子ども達にとって影響がありますよね。
西薗先生:ところが、体育が嫌いな子たちが想像した以上に多かったことを知り、苦手意識をなくしたいと思いました。その子にとって体育の1番いい先生になりたいとの想いをもって、始めたのがきっかけです。
えびさわ:私もバリバリな体育会系で、とっても大好き。うち父が体育の教員なのですよ。なので、良い先生に会えたおかげかなっていうのは心のどこかにあります。私も文京区議会議員になってから、子どもの中には体育が好きじゃない子が意外といる事を知り、体育塾を始めました。
-子ども達の体力の変化の原因は「3ない」
えびさわ:文京区で長年体育塾の先生をされていて、なにか感じたことはありますか?
西薗先生:体育塾に限らずっていうところではありますが、授業を行っていて子どもたちの体力の低下は間違いなくあると思います。原因のうちの一つは、子どもたちの遊びの時間にもあるのでは。そこに対して『3ない』って言われるものがあって、まず「遊ぶ時間がない」。
えびさわ:みんな塾行きますからね。私立の中学受験をする子どもが増えていますので。
西薗先生:それから「場所がない」。
えびさわ:公園が少ないですからね。
西薗先生:であとは、「友達がいない」。
一緒に遊ぶ友達が少ない点が原因のうちの一つにはなっています。運動する機会がどんどん減ってきている。
『3ない』とは別に、時代による遊びの変化もありますね。幼い頃はこまやメンコで遊んでいましたが。
えびさわ:メンコもしていたのですか?
西薗先生:僕はやっていましたよ、こまも回していましたし。あと女子だったらゴム跳びとかしていませんでした?
えびさわ:少しはやりました、懐かしいです。
西薗先生:ああいう風にして体を動かす遊びが主流だったのに、今の子ども達ってどちらかというと体を使わない遊びが多いですよね。
えびさわ:公園にいてもゲームをやっているし。
西薗先生:体育館で働いている知り合いが言うには、子ども達が集まってきて館内でもゲームをやっている(笑)。
えびさわ:体育館でもゲーム⁉それは初めて聞きました。
西薗先生:遊び方が変わった点が、すごく大きいなあと思います。昔の遊びって言われるものって結局習得型なのですよ。例えば、こま回しや、メンコを叩きつけるのは、実力が上がらないと遊びにすら入れなかったのですね。まず、回せるようになるまでがすごく大変です。
えびさわ:出来るようになるまで、練習するわけですね。
西薗先生:コマの場合は、紐の巻き方から始まり……回せるようになるまで自主練です。出来るようになって、ようやくスタートラインです。今の遊びって、買ってもらえればすぐに遊べる。修行の期間ってなくなったんですよね。今の子どもは忍耐力が足りないと言われてはいますけれども、蓄積されてきた技術がいらない遊びが主流になったことも関係あるかもしれませんね。遊び道具も、すぐに出来るようにならないものは、子ども達に人気がないそうです。だから、昔に比べるとずっと易しく丁寧な玩具が多いですね。
-成功体験の積み重ね
えびさわ:今、小学校の先生はすべての授業を教えなければいけないじゃないですか。体育の嫌いな先生もきっといると思うのですよ。体育塾でプロの西薗先生に教えていただくと、子ども達がのびのびするし、できるようになってその成果を実感しているように感じます。今後の体育は専科になっていくと予想をしていますが、その辺についてご意見をお願いします。
西薗先生:小学校の先生は全教科を担当されるので、本当に大変だと思います。で、そこに対して批判するどころか、先生の皆さんに対してリスペクトしているのですが。
えびさわ:時間がない中でも、ものすごく一生懸命やっていただいていつも感謝しています。
西薗先生:授業の工夫もされて一生懸命なのですが、できない子への対応がどうしても……なところがありますね。集団で授業をするので、仕方がないですが。だからこそ、我々のような専門家が学校教育の中に入っていくことで、少しでも体育が苦手な子ども達を救っていけるのではないかと思っています。そういう訳で、専科に関しては僕も賛成ですし、逆にプロが子ども達を教える様子を先生側が見学し、学校教育の方に活かしていただけたらとも。
えびさわ:それはいいですね!現在、体育塾でも跳び箱の指導をして下さっているじゃないですか。先生の授業を見学して、手をつく場所を跳び箱に線を引いて教えていらっしゃいますよね。ああいうコツを子どものころに教えてもらっていたら、きっと跳び箱が嫌いになる子がもっと少なかったのでは。一段目からの横跳び箱は、学校ではあまり習わなかったので、びっくりしています。
西薗先生:子ども達って、出来なければつまらないんですよ。それだったらレベルはとにかくまず一旦落としてあげることがすごく大事で、易しくなると「あっ、出来るんじゃないか」って。
えびさわ:そう、成功体験が大事なんですよね!
西薗先生:その成功体験こそが、できないことを乗り越えてやろうって原動力につながってくるので、その体験のベースが積み重ならないと、努力が無駄なんじゃないかと考えてしまいがちです。
えびさわ:ずっと出来ないままだと、不安な気持ちになっちゃいますよね。
西薗先生:努力して達成した経験が増えていけば、たとえ苦手なことにぶつかっても子ども達が頑張れるようになります。そういった意味では体育は自分の体で表現する科目なので、子ども達にとって、最も印象に残る成功体験が味わえるのではないかと思いますね。
-インクルーシブ教育であって欲しい
えびさわ:ありがとうございます。これからも、いろんな子ども達に体育を好きになってもらえるような指導をお願いしたいです。それから、先生は障害がある子のスポーツを教えていると伺っておりますが、未来の「スポーツひろば」はどういうところを目指そうとしていますか?
西薗先生:主に専門とするのは発達障害のお子さんです。発達障害がある子どもがすごく増えていることが現状ですが、通常級と支援級といった形でクラス分けするのではなく、同じ場で共に学ぶことが大事だと思います。そのためには発達障害の特性を、学校側がよく知ることも大切です。10年以上も発達障害者の指導を行っていますが、ちゃんと的確な指示さえ出せば、きちんと理解してくれるのですよね。もちろん時間がかかる子もいますが。僕も発達障害児の体育指導の仕方を、直接小学校に行って支援級の先生に教えています。
えびさわ:さすがです!
西薗先生:そこで感じるのは、先生方はあまり子ども達を褒めないのですよね。
特に発達障害のお子さんは先生の指示を聞くことに対しての、成功体験が少ないのですよ。
だから出来た度に褒めてあげるし、体育と同じように低いところからちゃんと始める。
えびさわ:先ほどの跳び箱のお話のように……ですね。
西薗先生:先生の話をきちんと聞けた成功体験が積み上がれば、ちゃんと話を聞けるようになるし。自然に褒めることができるように、日々子ども達のいいとこ探しに努めています。
えびさわ:いいとこ探しは素敵ですね!
西薗先生:常にいいとこを探そうとしていても、悪いところを先に見つけてしまうんですよね、人って。列に並べてないから早くしてくれとか、ちょろちょろしないで先生の話聞けとか。まずそっちを言ってしまうのです。そうじゃなくて……
えびさわ:ちゃんと出来ているときに「よく出来たね!」と。
西薗先生:うんそうだ!て感じで。悪いところを注意するのでなくて、いいところをちゃんと褒めてあげるだけでも、人はぐっと変わってくると思いますので。私はそこを一番大事にしています。
えびさわ:文京区も「個が輝き共に生きる文京の教育」という教育理念としてあげております。これからはインクルーシブ教育っていうのでしょうか、子どもの多様性を認める教育が大事だと思うので、是非子どもたちのためにこれからもよろしくお願いします。
西薗先生:今日も体育塾がありますが、こちらこそよろしくお願いします。
-今後の文京区の子ども達について
えびさわ:今後も西薗先生とも一緒に、スポーツを通して子ども達に体力をつけていきたいです。私たちNPO法人大江戸は、最初は私が陸上部だったので走り方を教えていましたが、西薗先生と出会ってから範囲が体育全般にひろがりました。体育が嫌いな子ども達が、少しずつですが苦手意識を乗り越える様子を目の当たりにして、本当に良かったと思っています。今では西薗先生に跳び箱やボール、そして縄跳びもご指導いただいていて、本当にありがたいです!そういえば、今はマット運動も教えていただいていますね。
西薗先生:振り返ってみると、いろんな種目を教えるようになりましたね。
えびさわ:文京区では、今は1校でしか教えてもらっていませんが、できればもっと拡げていきたいと思っています。いかがでしょうか。
西薗先生:もちろんです。区内でも1か所だけだと、近くに住む子どもしか通えないことも。「場所が遠いので、行きたくても通えない」などの声も聞いたりするので、ぜひ体育塾を拡げていただいて、そこに私も行かせてもらえたらと思います。
えびさわ:これからも文京区の子どもたち、そして多くの子ども達のためにどうぞ頑張ってください。ありがとうございました。
ライター 乙部 雅子