《対談》護国寺 岡本貫首に伺う「ご先祖と自分の命」

新コーナーの「!エビちゃんが聞きました」

第1回目は、平成25年8月15日、護国寺にて
真言宗豊山派大本山護国寺 第五十三世貫首 岡本永司さまと対談させていただきました。
お話()がとても盛り上がったので、3回に分けてご紹介いたします。

《第1弾に引き続き、護国寺貫首の岡本さまにお話しを伺ってきました》

前回は母の日についていろいろな新発見がありました。では2回めの対談をお楽しみ下さい。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
岡本貫首:護国寺貫首の岡本永司さん
敬称は省略させていただきました。


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(以下えびさわ)
日本のお盆が、実は仏教で定めた、母の日だったんですね(対談1話をご覧ください)。
でも、現在の日本では、お盆にご先祖様が帰ってくるというように伝わっているのはどうしてですか? 

岡本永司貫首(以下 岡本貫首)
それはね、日本の伝統の考え方と一緒になってしまったんです。お母さんにはお母さんがいて、そのお母さんにもお母さんがいる。つまりご先祖様のお母様も全部、という意味なのです。
自分のお母さんだけじゃなくて、おばあちゃん、曾おばあちゃん、曾々おばあちゃん……。
そういう方々も皆供養しなさい、となったわけ。

えびさわ
今度父のお墓参りに行くのですが、その時はお父さんの供養だけではなく、おじいちゃんやおばあちゃん、そして先祖の皆様に、「いつ見守ってくれてありがとう」と言ってきます。

岡本貫首
そうです。その気持ちでお線香をあげてくれば、えびさわさんはもっと素晴らしい女性になれますよ(笑)

えびさわ
はい(笑)。では、来週のお盆にさっそく言ってきます。

 岡本貫首
どう考えても先祖様の遺伝子が自分には流れているわけですからね。
今ではDNAとか遺伝子とか言っていますが、それを仏教では、「縁」と呼んでいまして。「縁」がずっと繋がっているんですよ。親子の縁、夫婦の縁、それらが繋がって、自分がいるわけです。えびさわさんにも繋がってきているんですよ。

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えびさわ
先祖からの「縁」によって今の私があるのですね。

岡本貫首
自分は今ピラミッドの一番上に立っているわけです。
裾はずーっと広がっているのです。一人ひとり、みんながそうなのです。
だから、命は大事なのですよ。

えびさわ
「私は一人で生きてるんだ」って言う人がいるけど…。
ひとりはあり得ない得ないわけでね。自分が生まれる前に親がいて、そのまた前に親がいて…。

岡本貫首
よく、七世の父母、六親眷属(ろくしんけんぞく)などといって供養します。七世の父母、つまり七代遡った両親。どれくらい居るかというとね、七代遡ると二百万人くらいの人がいるんです。
両親がいて、両親の両親がいてその両親がいて……という具合に。

えびさわ
…………数え切れない多くの方々に、私たちは支えられているのですね。顔も知らないご先祖様の「愛」が、私たちの中に流れているなんて、なんだか不思議です。
こうして受け継いだ「命」を、ひとりひとりが大切にし、感謝をしてしっかりと生きていかなければと、改めて思いました。

岡本貫首
だから、本来はさっき話したように、目連(モクレン)さんのお母さんの供養だったのですが、先祖様が戻ってみえるという日本のお盆は、お母さんの供養だけではなく、「縁」で繋がっている先祖様の供養をするんですよ。

えびさわ
初めて知って勉強になりました。そういえば春と秋にお彼岸がありますが。
お彼岸は仏教ではどんな意味があるのですか?

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岡本貫首
彼岸というのは、向こう岸を差します。向こう岸というのは悟りの世界、こちらの岸が娑婆(しゃば)世界。娑婆とは、悩みや苦しみのある世界です。
そこを抜け出して向こう岸に行くための行をするのがお彼岸なのです。
だからお彼岸というのは先祖の供養であると同時に、自分の行いを見直す日でもあるのです。
一年のうち二週間くらいは、その事を頭に置いて過ごしなさいということです。お彼岸は、当然先祖の日でもありますから、ご先祖様を供養し、自分の修行を見守っていただこうというわけです。

えびさわ
向こう岸に行くために、自分の行いを振り返り、反省し改めるための日ということですね。

岡本貫首
そう。改めることはなかなか難しいですけどね

えびさわ
以前に、貫首さまから、「怒らない」というお話を聞きましたが、実践するのが難しくて。

岡本貫首
「怒らない」というのは、怒っちゃいけないということではなく、いつまでも根に持ってはいけない。
いつまでも根に持っていると、凝り固まってしまうから、それを解していきましょう、ということです。

えびさわ
なるほど。確かにそうですね。根に持ってしまうと、そこから進展もなければ、新しいものも生まれてきませんものね。また、勉強になりました。

仏教というと、どうしても難しい「お経」というイメージがありましたが、毎日の生活の中の身近なことなのですね。
もっと多くの人に、貫首さまの法話を聞いて欲しいです。きっと毎日を元気に生きるヒントになると思うんです。

岡本貫首
聞いて欲しいというより、仏教にはこんな生き方、考え方があるんだよ、っていうのを、知っていただきたいな、と思っているのですよ。

えびさわ
ところで、今「道徳」という時間が減っているようです。
法話などを聞くことで子どもたちが、人を気遣う気持ちや、自分の行動を改める気持ちを学んでくれたらいいな~と思います。

岡本貫首
「道徳」というのはいわゆる、一般的に守るべきものを指しますね。
ところが仏法は、広い心で物事を見ていく、と言うことを説いているのです。

えびさわ
「広い心」。心に刺さる言葉ですね。自分の事を振り返って、広い心で、相手の立場に立って物事を考えていきたいですね。


第二回目の『!エビちゃんが聞きました』は前回に引き続き護国寺貫首の岡本永司さんとのお話しでした。

普段自覚することはあまりありませんが、僕がここにいるのは、それ以前の先祖様の誰かが欠けてしまっていてはあり得ないことです。幾つもの命に支えられて、僕がいまあるのだと言うことを胸に刻み、大切に日々を過ごしていきたいと思います。

写真撮影:刈谷 学  取材協力・記事:吉倉 実功

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