『地域と大学の連携とコミュニケーション』(関賢二さん/白山哲理塾塾長)

「対談!エビちゃんが聞きました」

今回の『対談! エビちゃんが聞きました』は東洋大学白山哲理塾の塾長、関賢二先生です。特別職として文京区の様々なことに関わった経験もある関先生に、白山哲理塾の「知の拠点」という方針を通して「学ぶこと」についてお話しを伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
関塾長:東洋大学白山哲理塾の塾長、関賢二さん


(以下えびさわ)
関塾長は元々文京区にいらしたそうですが……

関賢二塾長(以下関塾長)
元々じゃないんですけどね(笑)。僕は、会津若松出身ですが、会津には企業が全くなかったので最初は福島県庁に入りました。
その後、難関の自治省(現総務省)の試験に受かりまして転職しました。当時、東京23区を基礎的自治体にするために、区長会が自治権拡充運動を行っていました。誰か法律に詳しい人が必要だということで、僕が自治省から推薦されて区長会事務局に派遣されました。
法改正に目途がたち国に帰ろうとしたら、当時の区長である遠藤区長から「文京区に来てくれ!」と依頼されました。

えびさわ
その当時の、区長会事務局の仕事って国や都との調整など本当に大変だったのでしょう。その難しい仕事をこなした事を見込まれて、文京区から離してもらえなくなったわけですね(笑)

関塾長
いえ、1度は帰ったんです。元々僕の希望は、地方制度と人材育成でしたので、国に戻って国家公務員管理監督者の幹部養成教育を行いました。
そんな折にたまたま文京区で問題が起こりました。文京シビックセンターの2期工事が反対運動で中断されるという問題です。遠藤区長が僕を呼び工事を再開させ何とかシビックホールを完成させてくれと依頼されました。建築費の見直しや設計を一部変更し議会の承認も取り1年後に完成させました。
毎日押しかけるマスコミや住民対応で本当に大変な1年でした(笑)

えびさわ
シビックセンターのもの凄い大功労者ということですね!

関塾長
そんなことはありません。そしてシビックセンターも完成し、今度こそ国に帰ろうと思ったら、今度は「文京区に残ってくれ!」と言われてしまったんです。
結局、収入役、助役、副区長として文京区の仕事をしました。初のミニバス≪Bーぐる≫を走らせたのも楽しい仕事でした。

えびさわ
毎日こんなに便利に利用させて頂いているコミュニティバス≪B~ぐる≫も、塾長の仕事にひとつだったのですね。ありがとうございます。

ところで、現在は行政と離れ大学でお仕事をしているわけですが、大学の仕事に就いて何か思ったことというのはありますか?

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関先生
大学というのは高等教育を行っているわけです、勿論学生と関係しているわけですよ。ですが僕は学生が4年間の学生生活を終えても、大学というのはそこに、その場所に存在し続けるのです。

去年、東洋大学は125周年のお祝いをしたのですが、ということはつまり125年ここに存在しているわけです。そしてこれからまた100年この場所に存在し続けるのです。学生は卒業しても地域との関係は切れません。だから大学と地域というのは密接な関係にならないといけないわけです。要するに大学と街との間に壁を作ってはいけないんです。アメリカの大学なんかを見ると、街の中に大学があって一体的に街と大学が形成されているわけです。

そういったことで東洋大学も壁を作らず、この白山の街の中に大学が存在する、という一体的な街づくりが必要なのではないかなと僕は思っています。だからそのためにも東洋大学は白山地域の中の「知の拠点」という形で存在するのだ、という考え方を持っています。
僕は大学の役員に井上円了の教育理念、いわゆる知(智)の連携が絶対的に必要だということを常に訴えています。

えびさわ
そうですね。学生は4年で卒業するけれど、大学はずっとここに存在し続けて行くのですものね。
そう考えると、もっともっと大学と地域は繋がりがあって欲しいですね。大学の財産である、学生や施設が地域の中に溶け込んで来てくれたらとっても素晴らしい事がたくさん起こると思います。

たとえば、地域のボランティアに学生が参加してくれてり、施設を大学が貸し出してくれたししたら、文京区はもっとエネルギッシュな区になると思います。

関塾長
だから、大学の知や施設を地域社会に貢献するということは、これからもここに大学が存在し続ける上でとても大切なことなんです。
特に文京区は区内に多くの大学が存在しているわけですから。大学が閉鎖的では地域や行政との関係も希薄になります。
それではダメですね、地域も行政も「大学の知」というのものをもっと使ってくださいとお願いしたいですね。

えびさわ
是非、使わせてください。「大学の知」を地域に拡散してください。この白山哲理塾を拠点にして。よろしくお願いします。
私は行政にいつも、文京区には17もの大学があるそれも文京区ならではの資産です。もっと大学に協力を仰ぎましょうと言っているんです。

関塾長
そういった意味で地域や行政には常に声を掛けています。
大学にはエクステンション課という公開講座や生涯学習専門の組織がありますが、現実には学者先生の研究発表の場所になっていて、内容が高度専門的過ぎて一般の方には難しく馴染まないという声が多かったんです。
そこで地域の人々が気軽に学びたいと思える寺子屋的塾が、大学公認で設立した「東洋大学白山哲理塾」です。誰もが参加できそして誰もが講師になれるそんな塾を目指しています。

えびさわ
誰もが生徒で、誰もが講師。とっても素晴らしいです!! 

関塾長
哲理塾の「哲理」という名称は、中野区にある哲学堂正門の哲理門から取りました。そして昨年建築された125周年記念館は東洋大学のシンボル哲理門を模して建てられています。
文京アカデミーの名称も僕が助役の時につけたものですよ。

えびさわ
そうなんですか!? 文京アカデミーという名称にはどんな思いが込められているのですか?

関塾長
どこの自治体でも生涯学習は教育委員会が所管してます。それはそれでいいのですが、役所の機構の中でやるわけですから、休日や5時以後は時間外勤務ということで柔軟な対応が出来にくい現状がありました。
そうすると区民本位の生涯学習が運営しにくくなります、それを解決するため思いきって所管を教育委員会から切り離し公益法人化して出来たのが文京アカデミーです。

えびさわ
なるほど!!夜間や休日も学習出来たら、お仕事している人も参加しやすいですね。
働きながらあるいは大学にかよいながら学習する、まさに生涯学習ですね。

関塾長
現在、行革の一環で民間業者に委託されてるそうですが、設立の理念だけは持って運営してほしいと思います。

えびさわ
民間委託だと何が問題なんですか?

関塾長
受託業者が社会教育の理念に基づき運営しているのであればいいのですが、単なるカルチャーセンターになってはダメだと思います。公的な生涯学習というのはカルチャーセンターじゃないんです、そこで学んだことをさらに世に広めていく、輪を広めていかなければいけないんですよ。
理念、哲学がなくただ人を集めて講座をやりましたというだけでは民間のカルチャーセンターと同じになってしまいます。

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えびさわ
なるほど。文京アカデミーや白山哲理塾で勉強したことを、世に広めて行く、誰かに伝えて行くわけですね。
知をどんどん拡散していく。それが次の人材を育てて行くということですね。

関塾長
知の輪を広げる。それが哲理塾の目的です。
国家は人なり、ある人が教育し、教育された人がまた誰かに教育していかなければ人材育成は成らないんですよ。東洋大学に「松下村塾」を作ろうと考えたのが原点です。
いくら1人が優秀でも、長い目で見たらその瞬間だけで、繋がらないわけです。
知の連携が必要になるのです「街・人・大学 無限の学び」が哲理塾の理念です。

えびさわ
ここで勉強した人が地域に出て、地域で他の人に話して……学んだことを自分の中に留めるだけでなく、外に出していくことが重要ですね。
お金で買う事のできない、知の輪の広がりこそが文京区にしいては日本の財産になって

いくわけですね。今日はありがとうございました。とっても勉強になりました。今日、関塾長から学んだことは私も広げていきます。

 


『対談! エビちゃんが聞きました』の第5回は、東洋大学白山哲理塾の関賢二先生にお話しをお伺いしました。
関先生とはエビちゃん(えびさわけいこさん)の「トゥモロー・ユー」という団体で非常にお世話になっています。トゥモロー・ユーとは、白山哲理塾と連携して色々なセミナーを開くのですが、僕は毎回その場に係として参加し講義を聞いています。
様々な、実用的なテーマを取り上げたものばかりで非常にためになるな、と毎度思っていますが、それだけではダメだというのが分かりました。自分だけが「ためになるな」と思うだけで終わらせず、他の人に伝えていくのが重要ですね。家族なり友達なりに講義で学んだことを伝え、僕を起点に一つ知の輪を広げていきたいです。

写真撮影・記事:吉倉 実功

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