文京区で“教育プラットフォーム”を目指す(株式会社エデュスタイル代表 槙田 美規さん)

「対談!えびさわけいこが聞きました」
文京区で“教育プラットフォーム”を目指す、
株式会社エデュスタイル代表の槙田さんにお話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
槙田さん:エデュスタイル代表 槙田 美規さん


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―教育総合プラットフォームを目指す

えびさわ:こんにちは。本日はエデュスタイル代表の槙田さんにお話を伺います。まずは自己紹介をお願いできますか。

槙田さん:槙田と申します。私は小学館で、週刊誌、女性誌、子育ての雑誌、最後の方はデジタルでネットマガジンとかデジタル絵本とかいろいろなことをやってきました。そこを卒業しまして、出版社時代に色々とやり残してきたことを考えて、文京区で起業いたしました。それがエデュスタイルという〈ランドセルナビ〉で、ランドセルを売ったり、入学準備に関するコンテンツを扱うサイトを運営しております。

えびさわ:これがエデュスタイルさんのランドセルですね。これのポイントを教えていただけますか?

槙田このランドセルは、完全に手作りランドセルで、今の子供たちに合わせて、名古屋のランドセル作り五十数年の職人さんと友人のスタイリストにデザインしてもらいました。

えびさわ:すごくオシャレですよね

槙田さん:牛革で、うちのイメージとしてランドセルを作りました。パッと大人の人が革の鞄をイメージするのと違ってずいぶん軽いです

えびさわ:このランドセルは槙田さんにとってあくまでスタートというか、本来は教育のプラットホームを作りたいと願っているということなんですけど、そこにたどり着いたきっかけのお話をしていただけますか?

槙田:出版社でいろいろな取材をしてきたわけですけど、子育ての記事を相当長い間担当するうちに、この30年間で子供の生まれる環境は非常に厳しくなっていると、愕然としました。自分の子供時代と全く違う今の子供たちに対して何か少しでもできないかなと

私の子供時代は暗くなるまで外で遊んで、疲れ切ってウチへ帰って、バタっと寝るような生活をしていたわけですね。ところが今は全然違う。まず暗くなるまで外で遊ぶという子はいませんよね。社会の環境が変わってきて、子供たちが「ドラえもんのような空き地」で遊ぶことが出来なくなり、結局いつも親の管理の中でやらなければいけなくなっている子供たちに対して、少しでも何かしたい。そう思ったときに、何が一番大事なのかなって思いますと、一番は「親」だと思うんですよ。大人の世界でのいろいろな判断基準が、子供に当てはめられているという、すごく辛い状況に気づきました。

―「世の中基準からその子基準へ」

槙田:一つはなんでも「平均はどんなだ、世の中の真ん中はどのへんなんだ、みんなはどうしてるんだ」それに自分の子供を当てはめて、他の子はどうしているのとか、そういうことを気にしながら、それに当てはまらないと「うちの子は大丈夫なのかしら」と思ってしまう。それからもう一つ昔と違うところとしては子育ての情報も、お金をかければありとあらゆる教育を受けさせることができる。にもかかわらず、「これをやれば安心」というアベレージが子育てとか教育に関してはなくなってしまっている

子育ての情報も非常にバラつきがあるので、ベーシックなものとして押さえておきたいところを提供しながら、ネット上でのプラットフォームとして、親たちがみる場所をつくっていきたいなと思ったのが最初のきっかけです。

えびさわ:「世の中基準からその子基準へ」っていう会社の理念が。ものすごく分かりやすいと思います。保護者の方も「周りがどういうふうになっているのかな、うちの子は周りの子と比べて遅れてないかな」ということばかりが気になって、「その子の基準」をなかなか作ってあげられない、その子にとって何がいいのかをなかなか考えてあげられない。どんなふうに子育てをした方がいいかっていう情報を槙田さんが発信してあげられたらいいですよね。

「世の中基準からその子基準へ」っていう会社の理念が、ものすごく分かりやすいと思います。

槙田さん:あと、もう一つ、今のお子さんが昔の子供と違うのは、たくさん大人に出会えていないということですね。小さいうちに。昔は近所のおばさん・おじさん、いろいろな人に関わっていたんですよね。地域で。でも、今残念ながら男の人だと声をかけることさえ出来ない状態です。そういう社会の変化の中で、関われる大人が少なくなってきましたよね。だから、海老澤さんがやっていらしたのも良いなと思ったんですけど、小さいうちからできるだけ多くの大人に出会ってほしいなというのも一つの思いです。

えびさわ文武両道な子供を育てたいというのが私の理想なので、「かけっこ倶楽部」と「体育塾」というのをやっているんですけど、本当に子供たちが忙しそうで…。体育塾にきても「この次〇〇にいこう、さっきは〇〇に行ってきたの」という感じで、子供の時間というよりも、大人によってスケジュールを組まれているので、いつ遊んでいるのかなというのがちょっと心配になっています。

槙田さん:色々調べてみると、運動をしている子の方が成績上がるんですよね。これアメリカではっきりデータが出ていますけども、能力を上げるためにはある程度の遊びは絶対必要で、そういうこともお母さん方にはお伝えしたいなと思っています。

えびさわ:ぜひ、槙田さんが作るプラットホームで発信していただけたらと思います。

槙田さん:とにかく、今のどもたちが置かれている状況が私には厳しく見えるので、少しでも味方になりたいなという思いが一番強いです。

―ランドセル選びのアドバイス

えびさわ:その思いを込めて、まずこのランドセルですけど、ランドセルを来年買うお母さんにポイントを教えていただけますか。

槙田さん:まず「6年間修理対応」がついているランドセルを買ってほしいということですね。細かい機能がどうのっていうのではなくて、6年間修理対応するということは、ある意味「6年間壊れることがないですよ」ということなんですよ。だから、そういうものを選んで頂いて。あともう一つ大事なのは「お母さん、お父さんの考え」ではなくて「お子さんが欲しいというもの」を買っていただきたい

えびさわ自分で選ぶというのも大事なポイントですよね

槙田さん:親御さんからみると「6年生になった時、これじゃ恥ずかしい」と思うこともあると思うんですけど、そう思うことも一つの学び。

えびさわ:なるほど。そういう積み重ねも一つの学習ですよね。あとこれ、お手入れのポイントを…

槙田さん:注意していただきたいことは、ベルトの調節をするということです。

えびさわ:成長しますもんね。

槙田さん:今中に入れるものがとても重たいので、すごく軽く作られているんですけど、それ以上に、背負う時の重心の方が体感重量に影響を与えるんですね。今流行りのダラーんとしたリュックの持ち方、ベルトが長すぎると、重たく感じる。背中がぴったりついて重心が上にくるように背負わせてあげるために、ベルトの調節は常に親御さんの務めとしていただきたい。

それともう一つ大事なのはランドセルカバーなんですね。

えびさわ:ランドセルカバー!? 文京区では新一年生は必ずつけています

槙田さん:良いんですよ。良いんですけど、雨が降って濡れた時に、ランドセルカバーとランドセルの間に水が溜まってしまうことがあります。そういう時に何も考えず放置してしまうと、かびたりしてしまいます。だから、濡れた時は一旦ランドセルカバーを外して拭いてあげるくらいのことはしてあげる、と。大人の鞄と違って汚れ防止の樹脂加工されているからほとんど手入れする必要ないんですよ、だけどランドセルカバーだけは手入れしてほしい。

えびさわ:ランドセルカバー渡すときに、それを言わなければダメかもしれないですね。必ず一年生には送っているので、思わぬところではありました。

―子ども達に平等な支援を

えびさわ:槙田さんは文京区に住んでいらっしゃるので、お互いにこれから情報交換しながら、いろいろなことができたらなと思っています。最後に、槙田さんが目指す教育プラットフォームについて改めて教えていただけますか。

槙田さん:教育のプラットホームというのは先ほど申し上げたように、最低限の親御さんたちがやったこと方がいいことを語る場で、できれば最終的には親御さんたち同士が語り合える場

SNSなども色々ありますけれど、子ども達のために何らかの形で協力体制を作るというのはものすごく大切なことだし、そのために互いの立場を理解し合うというのも大事。

あとは、行政の方にお願いしたいことがひとつありまして…。行政の方はさまざまなクレームに対応せざるを得ないから、どうしても声の大きい人たちの意見ばかりを反映しがちになる。びっくりするようなことを仰る親御さん一人のために物事が変わったりする。よく聞くんですよ「幼稚園で『こういう親』がいるせいで、全部この遊びが禁止になった」というのを。そういうことがないように、うまい手を考えてもらえないかなって、すごく思いますね

えびさわ:本当に、子供のためを思って子供のための政策を考えていけたらなって思いますね。
文京区の中にもいろいろなお子さんがいらっしゃいますが、子供はできるだけ平等にしていきたいなと思いますので、ランドセルを買えるように入学支援や塾の支援などもしており、スポーツの支援もしてあげたいなというのが私の願いです。そのほかにも、今回、全ての子供たちに所得制限なしで3万円を給付します。子供が差別なく成長できるようにしていきたいなと思います。これからも力を貸していただきたいなと思います。

槙田さん:こちらこそよろしくお願いします

えびさわ:本当に今日はありがとうございました。

ライター 木下絢美


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これからのスポーツ教育についてのお話(筑波大学特命教授 真田 久さん)

「対談!えびさわけいこが聞きました」
今回は、筑波大学特命教授の真田久さんに、これからのスポーツ教育についてのお話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
真田教授:筑波大学 体育系特命教授 真田久さん


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―筑波大学の先輩・後輩

えびさわ:先生は2期(体育専門学群)だと先ほどお伺いしましたが、私は農林学類の10期なので、大先輩ですね。その頃の筑波大学はどんな感じでしたか

真田教授:大学はまだ建設途上でありまして。 ちょうど農林学類がある場所ですが、よく私は造りに出かけていました。日雇いの労働者として、ですね。

えびさわ:校舎を造る……校舎を学生さんがバイトで、ということですか?

真田教授:当時はあまりアルバイトがなかったので、工事現場に行きますと「明日、1日来てもいいぞ」って言われて、そしたらそこで働くと。

えびさわ先生が造った校舎で私が学習したってことですね。ありがとうございます、大変楽しく4年間学ばせていただきました。

―東京2020が残したもの 未来に繋げる

えびさわ:東京オリンピックも無事終わりました。これから未来にどう繋げていくかを、オリンピック関係の仕事を現在もされている先生に、今日はお伺いできればと思っております。

真田教授:この東京2020大会は、2013年に開催することが決められました。 その間にいろんなことが実は準備として行われてきまして、その中の1つがオリンピック・パラリンピック(以下オリ・パラ)教育です。東京都内で言えば、2300校全ての公立学校で年間30時間、だいたい週1時間オリ・パラについて授業で学びました。

もう1つはホストタウンですね。 一般の市民の人々が自治体を中心にして、外国の選手や外国の方々と交流する活動も行われました。本番ではコロナ禍によって実際に会場に足を運ぶことが、ほとんど出来なかったのですが。しかし、オリンピック・ムーブメントが非常に長い期間にかけて行われた特筆すべき大会だった、と考えております。

えびさわ文京区でもドイツとホストタウンとして提携させていただいて、ハンドボールとバドミントンが練習会場でした。ところがコロナ禍のため、練習風景を見学できなかったのは、本当に残念ですよね。

真田教授:本番の時に実際に観戦できなかったのは、非常に残念な点ではありましたが。

えびさわ:そうですね。しかし、その前に子どもたちが「こども新聞」を作って選手にインタビューに行ったり、ホストタウンの紹介をしたり、そんな形でいろんなレガシーはできたのかなと思います。

―日本のオリンピック史は文京区から 嘉納治五郎先生

真田教授:私も「こども新聞」の記者さんたちに、嘉納治五郎先生のことでインタビュー受けたことがあります。

えびさわ:筑波大学といえば、嘉納治五郎先生ですからね。

真田教授:オリンピックが終わった後に、小学生の生徒さんたちからインタビューを受けました。

えびさわ:みんないい子だったでしょう。

真田教授:熱心に興味を持ってインタビューしてきましたね。

えびさわ:どんなことを聞いてきましたか?

真田教授:例えば「なぜ先生は嘉納治五郎先生に興味を持ったのですか?」と聞かれた時に、「私は実は水泳をやっていたのですよ」と答えました。そしたら、「水泳をやっている人がなぜ、柔道の嘉納治五郎先生に関心を持つのですか?」って。実は水泳の歴史を調べたら、嘉納治五郎先生が日本に広めたっていうことが分かったんです、と伝えたのですよ。

えびさわ:本当ですか?初めて知りました。

真田教授:多くの文京区内の学校ではプールがあると思います。その縁源を辿っていきますと、「日本は水泳が絶対に必要だ」っておっしゃって、学校教育に水泳を必修にしていったのは、実は嘉納治五郎先生なんですね

えびさわ:思い出しました、NHK大河ドラマ「いだてん」にありましたね。

真田教授:「いだてん」では、私はスポーツ史考証を担当していました。スポーツ史から照らして脚本の内容が合っているかどうか、考証作業なども関わらせていただきました。

えびさわ:嘉納治五郎先生がちょっと銅像よりも、かっこよく描かれている感じがしますが。

真田教授:そうですね、本当はもう少し大柄でなかなか迫力のある感じでしたが。でも、非常に人間的というか。

えびさわ:はい、温かみがすごくありましたね。

真田教授:実際はそんな感じだったと思うのですよね。柔道関係者には「嘉納先生はもっと高尚な人だ」って言われるのですが。しかし、当時の嘉納先生のご様子を筑波大学関係者から伺うと、本当に学生の中に気さくに入っていったそうですよ。 例えば入学式の後に歓迎会がありますが、その時には嘉納校長先生が新入生のとこに降りていって、腕相撲をされるのですよね。

えびさわ:嘉納治五郎先生が自ら「腕相撲をしよう」と?

真田教授:そして新入生を全員負かせてしまうのですね。

えびさわ:やっぱりすごい方だったのですね!

真田教授:そんなことが、実際に東京高等師範学校の文献に書かれてあります。

えびさわ:もっとみんなに嘉納治五郎先生を知ってほしいなって、私とかそう思ってしまうんですけどね。そのレガシーをこれから筑波大学としては、ぜひ文京区と一緒に何かしてほしいなって、すごく思うんですね、卒業生のひとりとしては。せっかくここにあるし。

真田教授日本のオリンピック・ムーブメントが始まったのは、まさに文京区のこの場所(筑波大学東京キャンパス)からですから。ここは昔、東京高等師範学校があって、校長室が大日本体育協会(日本スポーツ協会の前身)の事務所でした。国際オリンピック委員会など世界のスポーツ界の人たちがここを訪れたり、手紙を送ったりしました。また、オリンピック選手がこの場所から育っていき、まさに日本のスポーツを支えてきたそういう場所になります。それをリードしたのが嘉納先生でしたので、その流れを汲む筑波大学と文京区で、是非ともいろんな連携ができたらいいねと思っております。

 

―留学生と文京区の子どもたちとの交流を

えびさわ:私は未来の子供たちに残せるようなことをしていきたいです。どんな案がありますか?

真田教授:東京オリ・パラが決まった時に、筑波大学でも政府から依頼された事業がありまして。優秀な外国の若者を日本に呼んで、筑波大学でオリ・パラや、嘉納治五郎について学んでいただく。あとは、日本の文化とか。マナーやおもてなしの精神を、学んでいただく。このようなプログラムを始められました。現在もそれは続けております。

えびさわ:筑波国際スポーツアカデミーに、世界中から日本のことを学びに来ているのですね。

真田教授:そういう学生さんと先ほど会いました。文京区の「こども新聞」、こうした子どもたちととなんらかの接点が作れたらいいなと思っております。文京区の子どもたちと、それから留学生で日本のことを学びに、オリンピックやスポーツのことを学びに来た学生たちと交流をする。例えば、東京2020大会の思い出を語りあうなどですね。自分たちの国のスポーツについて話し合うことで、ホストタウンに力を入れた文京区の子どもたちにとっては、世界に対して色々と目が開かれていくように感じるのですよね。また、留学生たちに、スポーツのレッスンを英語でやってもらうのも、子どもたちが喜んで英語を覚えるようになるかな、と期待しています。

えびさわ英語とスポーツと国際みたいな感じですね

真田教授:この3つを繋げて何かができるのではないかなと。

えびさわ:それは素敵ですね。筑波大学に留学してきた子は、短期留学でなく学生として来てくれるのでしょうか?

真田教授:そうですね、筑波大学に入学して学びます。

えびさわ:それはありがたい!

真田教授:そのための資金も少し用意できそうですので。文京区の子どもたちと留学生とで、国際交流をぜひともやっていきたいですね。

えびさわ:ぜひ、楽しみにしています。

―多様性と調和 スポーツを「作る」

えびさわ:せっかく「オリ・パラ」とうたっているので、パラリンピックについてもやっぱり子どもたち、それから区民のみんなにも、いろんなことを知ってもらいたいです。

真田教授:これは大事な点ですよね。特に学習指導要領では、オリンピックのみならず、パラリンピックについても学んでいくことが、はっきりと明記されていますので。オリ・パラ開催時に、「多様性と調和」が大会ビジョンのひとつでした。それを実際の社会の隅々にまで浸透する上では、パラスポーツにも関心を持つことは大切ですよね。

えびさわ:パラリンピックの時だけ、障害者のスポーツが注目されるのではなく、普段もそういうスポーツが注目されるような土壌を作っていけたらな、とすごく思います。 そのために出来ることは何でしょうか。

真田教授:体育の授業などでも、ますますそういう視点が大事になっていきますね。これまではスポーツを「する、見る、支える」とよく言われていましたが、学習指導要領ではそれらに「知る」が入ったんですね。例えばオリンピックの理念や、パラリンピックの考え方について知っていくことですね。さらに第3期のスポーツ基本計画ではスポーツを「作る」も入っているのですよ。

えびさわ:新しいスポーツを「作る」ということですか?

真田教授:そうですね。例えばルールがどこでも共通しているスポーツを、その人たちの状況に応じて変えてしまう。あるいは、スポーツそのものも変えてみる。もしも障害がある人たちがいれば、彼らが遊びやすいスポーツにしてみる。またそこに普通の人たちが入ってもできるようなルールを考えて作っていく

えびさわ:素晴らしいですね。

真田教授:そして、高齢者の方が混ざった時に、どういうスポーツにしたら、お互いに出来るのかを考えて作っていく。それがこれから大事になっていく、と言われているのですよね。

えびさわ文京区ではビーチボールが意外に盛んなんです。バレーボールのルールと変わりませんが、ボールが少し大きくて柔らかい。こんな感じですか?

真田教授:そのとおりです。

えびさわ:その人自身や年代などに合わせた新しいスポーツをどんどん作っていこうということですね。日常生活の中で、どんな方でも誰でも楽しめるように。

真田教授:これまでは決まったスポーツがあって、そこに適用しているという考え方だったのですが、これからはその人の状況に合わせて、むしろスポーツをどんどん変えていくことになるでしょう。例えば子どもたちがルールを考えていく。それはある意味で、東京2020大会のビジョン「多様性と調和」をレガシーとしても、発展をさせて、社会に増殖させてくという意味で、非常に大事なことだと思うのですよね。

えびさわ:すごくいいお話を伺いました。これから子どもたちの教育をしていく中でも、絶対に必要なことですよね。

真田教授:社会そのものも変わっていくではないかと期待されますよね。

えびさわ:そしたら、差別とかそういうことがなく、みんなが楽しめる世界になってくると思います
そのためにもこれからいろんなアイディアや、情報交換をさせていただけますか。

真田教授:文京区が「誰もが楽しめるスポーツを作る」の先駆的な取り組みをどんどんやっていただけたら嬉しいですし、なんらかの形でサポートできたらなと思います。

えびさわ:ぜひお願いします。

真田教授:その一環で、例えば留学生との交流。それも大事なことだと思いますし。それを実現させたいとは思いますので、区長さんによろしく伝えていただけますか。

えびさわ:はい、承知しました。今日はどうもありがとうございました。

ライター 乙部雅子


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「すし作家」岡田大介さんに、食や命に対する思いを聞きました。

岡田さんとえびさわ

「対談!えびさわけいこが聞きました」
今回は、「すし作家」という一風変わった肩書をお持ちの岡田大介さんに、
食や命に対する思いや、子どもたちへの食育について聞きました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
岡田さん:岡田大介さん


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―「すし作家」ってどんな職業?

えびさわ:岡田さんは寿司店「酢飯屋」のオーナーであり、「すし作家」という肩書もお持ちです。どんな職業ですか?

岡田さん:僕は寿司職人として、20年弱くらいお店をやってきたんですけど、2~30年後を考えてみた時に、なんとなく先が見えるというか、想像がついてしまったんですね。

えびさわ:自分の未来が?

岡田さん:はい。

えびさわ:「もっと広げてみたいなあ」と思ったんですか?

岡田さん:お店を広げたいというよりは、20年の経験を活かして寿司職人だからこそできる、寿司や海、魚にまつわる色々な仕事をしていこうと思うようになりました。

 

―写真絵本『おすしやさんにいらっしゃい!』に込めた思い

えびさわ:その一つが、2022年に「第27回日本絵本賞」を受賞した『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』ですね。

岡田さん:そうですね。これを作った時は「すし作家」とは名乗っていませんでしたが。

でもこの本が人気評価を頂いて。僕は作家さんに対して「何をしてもいい」「やりたいことをやっていく」というイメージを持っていました。逆に言うと、寿司職人には「毎日この店でお店を守ってなきゃいけない」という硬いイメージがあったので、もっと自分のやりたいことを広げていきたいと考えたわけです。

えびさわ:お店から外に出て、海やお客様など出会う人のそばに寄り添うという感じですか?

岡田さん:そうです。

 

―僕たちは「命」を食べて生きている

えびさわ:この本を読ませていただくと、お魚を釣ってさばいて、口に入るまでの過程を説明していらっしゃるんですけど、岡田さんが考える食育が描かれているのでしょうか。

岡田さん:この本のサブタイトルは「生きものが食べものになるまで」です。自分たちが食べているもので、生きていないものは2つしかないんですよ。

えびさわ:何ですか?

岡田さん:塩と水だけ生きていない。

えびさわ:息をしていないということですか?

岡田さん:生命体じゃないということですね。ということは、塩と水以外は全部もともと生きものだったということですね。

えびさわ:命がある。

岡田さん:そうですね。お米の一粒一粒、調味料もね。それでお寿司を握ったときに、お寿司が命の塊に見えたんですよ。「どれだけの命を一回で食べているんだろう」と。そんな風に「寿司っていう食べ物じゃなくて命の塊なんだ」という見方をし始めた時に、「いただきます」「ごちそうさま」を言うことで、本当に命をたくさん食べて毎日生きているんだなっていうのを改めて伝えなきゃいけないと思いました。

えびさわ:確かにそう思います。

岡田さん:でも、お店で命の話とかをしても、お客様はおいしいお寿司を食べに来ているわけだし、あんまりそんな話を聞きたくないじゃないですか。子どもたちにも命の話をしても「ふーん」みたいな反応で、「魚は生きてたんでしょ、知ってるよ」で終わっちゃうんですけど。

えびさわ:知識としては知っていても、実感を抱く機会はないかも。

岡田さん:だから写真絵本という形にして、魚を釣るところからお寿司になるまでのストーリーを描いたんです。まずは魚に対して美味しそう、かわいい、気持ち悪いとか色々な感情があって、一番最後に命のメッセージが出てくるんですけど、いきなり命のことについて触れず、お寿司を入り口にしているところがポイントです。「ごちそうさま」になる前のページに、「生き物は食べ物になって君たちの体の一部になる。私たちはたくさんの命でできているんだ」という言葉が出てきます。

えびさわ:いいセリフですね。本当にその通りだと思います。私たちはたくさんの命でできているんだっていうのを子どもたちに伝えたいということですね。

岡田さん:話しても全然聞いてくれないんですけど、絵本だったら読んでくれるし、ちゃんと子どもなりに解釈して理解してくれるんです。この絵本を読んだことをきっかけに、子どもたちになんかしら引っかかって動いてくれるというかね。

えびさわ:いいですね。私も「フーディングジャパン」というNPOを立ち上げていて、料理教室とかしているんですけど、その時も必ず「いただきます」「ごちそうさま」の話をして、「命をいただいたんだよ」という説明を必ずしているんですけど、やっぱりこの言葉を大事にしていきたいなって思っているので、この本に共感いたしました。

―食べものに触る、岡田流食育

えびさわ:岡田さんは食育の一環として「食べ物を触ってもらう」という話を伺ったのですが?

岡田さん:昔はよく「食べ物で遊ぶな」と言われていて、僕もそう言われて育ちましたけど、食べ物で遊んだ方がいいかと思っていたんですね。遊ぶっていっても、ぐちゃぐちゃ触ってぽいって捨てるんじゃなくて、食べる前の素材の状態を観察して、じっくりと触る。「こういう硬さなんだ」「こんなべちゃべちゃしてるんだな」と色んなことを感じて、その後に調理をして食べることに意味があるのだと思います。食べる側だけに立っていると、例えば「回鍋肉食べよう」という時に時にキャベツや豚肉、調味料などの原型まで遡ってたどるのにすごく時間がかかるんですね。

えびさわ:そこまでの過程にいろんな人が携わっている

岡田さん:そうです。なので調理の過程で食材に触って観察して、というのをやってもらうと、子どもたちはずっと興味を持って食材に触れているんですよ。魚離れとか言われていますが、実際は全然そんな風に感じないんですよね。みんなお寿司がすごく好きですし。

えびさわ:お寿司大好きですよ。

岡田さん:でも、子どもたちに魚を触ったことあるか聞くと、想像以上に少ないんです。なぜかというと、例えば魚屋さんで魚に触るとお父さんお母さんに怒られるじゃないですか。「商品なんだからダメだよ」って。水族館だとお魚を触ってもOKなコーナーはありますけど。

えびさわ:でもちょっとだけですよね。あとまあ窓越しというか。

岡田さん:食べるような魚はまず触れない。

えびさわ:そうですね。

岡田さん:魚を触る機会がないので、僕が釣った魚を小学校や教育機関に送って、それをまずみんなで観察したり触りまくる。そしてさばいて食べる。コロナ情勢によってはさばくところでまででしたけど、昨日の荻窪でのイベントではみんなで食べられました。

えびさわ:今度、私のNPOとか文京区の子どもたちにも開催してもらいたいです

岡田さん:もちろん。

えびさわ:ぜひ、それは楽しみ!話は変わりますが、岡田さんのお店では、自分で釣った魚しか出さないという噂を聞いています。

岡田さん:そうです。ここ2,3年ずっと、自分が釣った魚だけでお寿司を握るって決めています。なのでお店に来ても3種類しかないとかね。

えびさわ:その魚たちがどこでどうやって獲られて、お客さんの前に辿り着いたということが全部教えてもらえるっていうのは、すごく幸せなことですよね。

岡田さん:好きな方にとっては面白いし、そういう寿司屋さんが好きじゃないっていう方もいますよ。釣ってきた魚については、話せないことはほとんど無いですね。何でも聞いてほしいし、伝えたいです。

えびさわ:ぜひ文京区の子どもたちにもしていただきたいなと思います。楽しみにしてます。

―魚が苦手な子どもはどうする?

えびさわ:文京区では、「和食の日」を設けて、子どもたちに給食で和食を体験してもらえるように取り組んでいます。何かいいアドバイスがあれば。

岡田さん:和食、和食って定義とか決めていましたっけ

えびさわ:決めていないです。

岡田さん:和食には寿司以外の魚料理がたくさんありますけど、魚嫌いとか食べたがらない理由のほとんどは、骨と鱗があるからなんですよ。逆にいうと、下処理やチョイスする魚の種類で解決します。まずは骨がない魚を食べればいいんですよ。

えびさわ:骨がない魚ってあるんですか?

岡田さん:切り身になっている大きな魚とか。例えばカジキとかってもう骨ないじゃないですか。そういう魚を使った美味しい料理を食べていくというところからスタートしないと、1本でも骨があると「もう二度と食べない」というモードになりがちです。「そんなことをしていたら、骨が取れない大人になっちゃうじゃないですか」ってたまに言われるんですが、大人になったら取れるようになりますから、大丈夫です。

えびさわ:そうですね。嫌いじゃなくて興味を持って好きになって食べてみるって感じですね。

 

岡田さん:魚を好きになるところが大事なので、いきなりサンマとか出されても、それは大人でも大変なわけですから。最初は骨なしのカジキのようなもの、次は金目鯛の煮付けのような、骨を数本抜けば食べられるものがおすすめです。自分で抜く体験も必要ですし、だんだん慣れながら小骨の多い魚に挑戦していけばいいと思います。大事なのは魚を好きになることなので。

えびさわ:それは目からウロコです。魚イコール骨があるものだと思っていたので、ひと工夫するだけで魚が苦手な友達に良い体験をさせてあげられるなと。私もほかの人に伝えていきたいと思います。また今後もアドバイスいただけますか?

岡田さん:もちろんです。お魚とか海とかそういうことならば僕の知識が足りるものがあれば。

―食育の実践 子どもたちと魚で遊ぼう

えびさわ:子どもたちと一緒に釣り体験とかもできちゃったりします?

岡田さん:それはやりたいですね

えびさわ:本当ですか?

岡田さん:今週末も佐渡島で、みんなで釣りをしてでさばいて寿司にするまでを体験するイベントを予定しています。なかなか釣りからだとハードルも高いですが、やりたい。

えびさわ:まずは、お魚に触る、魚で遊ぶ体験から一緒にやらせていただいていいですか?

岡田さん:そうですね。そこからですね。

えびさわ:本当にありがとうございます。ぜひお店に行きたいと思うので、皆さんもぜひ『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』を読んでみてください。今日はどうもありがとうございました。

ライター 宮永加奈子


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