これからの図書館が担う役割について(TRC代表取締役 谷一文子さん)

今回の『!えびさわけいこが聞きました』は、
株式会社図書館流通センター(TRC)代表取締役の谷一文子さんです。
これからの図書館が担う役割についてお話を伺いました。


えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
谷一社長:「株式会社図書館流通センター」代表取締役 谷一文子さん


対談の様子はこちらからご覧いただけます(8分27秒)

 

-図書館の役割とは 小石川図書館リニューアルに向けて

(以下えびさわ):谷一社長が考える図書館の役割は何でしょうか。

谷一文子社長(以下谷一社長):図書館とは、本来は人類の英知が詰まった場所だと思います。皆さんは図書館に、本を借りたり勉強しに行ったりしていらっしゃいますが、役割が少し変わってきていると感じます。新聞を見ていたら、引きこもりの方が図書館で勉強していた記事が載っていました。本や情報を使って、自己啓発ができるような場になっているのでは、と私は考えています。

えびさわ:谷一社長から大和市の公共施設「シリウス」を見せて頂いたのですが、図書館だけでなく、イベントの拠点にもなっていました。文京区の図書館もそうなって欲しいな、と強く感じました。区内には図書館が11箇所ありますが、現在の文京区の図書館についてどのような印象をお持ちですか?

谷一社長:以前はおそらく図書館界の方針もあって、区内では「近いところ、歩いて行けるところに図書館を」というコンセプトで建てられていると思います。ただ、少なくとも文京区には、多くの蔵書を持った大きな図書館が作られなかったので、そういう意味では居場所としての場が少ない気がします。現在は図書館に、居場所的なものや情報交換の場として新しいものを生み出す場所が、求められていると感じます。ぜひ文京区さんにも、そういう場が出来たらいいな、と願っています。

えびさわ:今度、小石川図書館が新しくなる時には、本を借りるだけの場ではなく、人で賑わう場所にできたらと希望しています。そこで未来の図書館をどんな風にしていったらいいか、アイディアがあれば、教えていただけますか。

谷一社長:ぜひ、複合化はしていただけたらと思います。先日、岐阜のメディアコスモスに行きましたら、1階は交流センターやイベント会場、2階が全部図書館なのですが、本当に楽しい場所でした。例えばですが、小石川図書館を建て替える時に、スポーツの施設やアリーナなどみんなが集える場所を、同じ施設内に建てるなどはいかがでしょうか。

えびさわ:交流の場としての図書館であってほしいですね!

 

-図書館の電子化

えびさわ:今はどんどん世の中の電子化が進んでいますが、図書館の電子化についてはどのようにお考えですか?

谷一社長:電子化はコロナの影響もあってすごく進みました。ウイルスの問題などで非接触型が望ましいのもありますが、資料としても便利だと思います。紙の本も優れてはいますが、文字の拡大や音声が出るとか、紙だけでは補えなかった機能が電子書籍にはあるので、両方とも図書館にあったらすごくいいですね。

えびさわ:障がい者の方も音で読めるし、高齢者にとっては字を大きく出来るのは、本当にいいことだと思います。ぜひ電子図書も増やして欲しいです。まだまだ文京区全体で数千冊程度ですが、どのようにお考えですか?

谷一社長:出版社さんのコンテンツを出すので、著作権をクリアしながら増やしているところです。出版社さんは最近ではかなり理解がありますよ。特に子どもの本を扱う出版社さんでは、学校などで使う朝読用として電子書籍を扱うようになりました。これから出版社さんにご理解いただければ、さらに増えると思いますよ。

えびさわ:ご理解が大事ですよね。ぜひそのように文京区もしていきたいですが、なかなか進まないところが悩みの種なので、そういう時はまたお力を貸していただけますか?

 

-臨床心理士から図書館の世界へ

えびさわ:話は変わりますが、谷一社長ご自身はどうして図書館流通センター(以下TRC)にお勤めになられたのですか?

谷一社長:これは本当に偶然です。病院の臨床心理士だったのですが、事情があって退職した時に、公務員試験がありました。たまたま資格を持っていた司書も募集していたので、試験に受かり、岡山市の図書館に勤めました。10年くらい経ってから主人が東京に転勤になったので、退職して引っ越しました。30歳を過ぎると公務員としての再就職が厳しい時代だったので、民間の会社も視野に入れました。TRCは公務員時代にお付き合いのある会社でしたが、たまたま営業が私の大学の先輩だったので、試験を勧められました。再就職先がなかなか見つからず、「しょうがないなぁ」と思いつつ臨んだら(笑)、受かったので入社しました。

えびさわ:でも本にはもちろん興味がおありですよね。

谷一社長:そうですね。そういう意味ではTRCに入った時も、最初はデータ部でした。データ部ではまさに分類や目録などデータベースを作る部署に配属されたので、司書時代の仕事内容がそのまま活きました。

 

-“チャンスがきたら、受け入れる”

えびさわ:データ部を見学させて頂いた時に、部署内には女性がたくさんいらっしゃいましたね。私も女性の一人として、同性の活躍は心強いです。私を手伝っているボランティアにも女性が多いので、何かコメントをお願いします。

谷一社長:先日ある方に言われたのですが、「チャンスが来たら、それは受け入れなさい」って。いつも私は目の前にあること、例えばデータ部から営業部に変わる時も、お断りせずに引き受けてきました。そうしているうちにいろんな道が開いてきたので、きっと「yes」と言ってチャンスを掴んでいけば大丈夫ではないでしょうか。

えびさわ:すごく心強い言葉です。この話は、機会があったら学生にも話して聞かせてあげたいです。私にも響いたので、何かチャンスがあれば掴みに行こうと思います。
最後に、将来の図書館、今後の未来図書館にはどんなイメージを抱いているか、教えていただけますか。

谷一社長:どんな人でも使える場所、例え図書館に足を運べない方でも「図書館」をキーワードにして、幸せを見つけていける――。そんな未来像を描いています。

えびさわ:さすがです!子どもたちにもメッセージを贈っていただけますか。

谷一社長:図書館はまさにSDGsを実現する場所だと思います。教育もありますが、それだけではなく環境や貧困のことなどを学べる場で、また実践する場でもあると考えています。私たちの会社としても取り組んでおりますが、図書館としてもっともっと豊かでサステナブルな世界が実現できたらいいですね。

えびさわ:とても勉強になりました。ありがとうございました!

ライター 乙部雅子


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