今回は、「ロボットを社会インフラへ」をテーマにさまざまな製品を開発している
株式会社ZMPの谷口恒さんからお話を伺いました。
えびさわ:文京区議会議員えびさわけいこ
谷口社長:株式会社ZMP代表取締役 谷口恒さん
対談の様子はこちらからご覧いただけます
-文京区にあるロボットの会社
えびさわけいこ(以下 えびさわ):ZMP株式会社は文京区にある素晴らしい会社だと聞いたので、興味を持って伺いました。谷口社長の自己紹介と、この会社を作った理由を説明していただけますか。
株式会社ZMP代表取締役 谷口恒さん(以下 谷口社長):私はもともとエンジニアでしたが、インターネットに興味を持って、会社を辞めてネット事業を起こしました。アメリカの後追いだったインターネットのバブルが崩壊したときに日本の長所について考え、ものづくりやロボットが強みだと気付きました。それで、ロボットを使った楽しくて便利な社会を作りたいとの気持ちで、会社を設立しました。
えびさわ:宇多田ヒカルさんのプロモーションビデオにも出てきたロボットちゃんを製造されたそうですね。
谷口社長:2001年に「can you keep a secret」で共演させてもらった「PINO」ですね。この人型ロボットを事業化するために会社を作ったわけです。
えびさわ:それから本日に至るまで、「歩行速」ロボットまで開発されたと伺いましたが。
谷口社長:人間が歩く時と同じ速度で移動するので「歩行速」という言葉を使っています。人を乗せて移動支援したり、食事を運んだり宅配をしたりする「歩行速」ロボットを開発しています。
-文京区にあるロボットの会社
えびさわ:皆さん、ロボット三兄弟を知っていますか?それぞれ 宅配のロボットの「DeliRo(デリロ)」。歩行速で人を楽に運んでくれる「RakuRo(ラクロ)」。パトロールをしてくれる「PATORO(パトロ)」。現在は各自治体で三兄弟のいろんな実験をしていると伺っているので、その実験の状況などを教えていただけますか?
谷口社長:2019年に警察庁の方に届出をだしたところ、「RakuRo」には人が乗っているから、電動車いすの延長だということで公道での許可がおりたのですね。それで、その年の10月から東京都中央区で住民向けのシェアリングサービスを始めました。これも実証実験を終えて事業として今も継続しています。10分300円、月額11,000で乗り放題の2つのサービスです。お客様はスマホアプリ「RakuRoシェア」をダウンロードしてからカードの登録をしていただくと、中央区のある範囲内を自由に自動運転で移動できます。
えびさわ:自宅と病院間の送り迎えも、「RakuRo」でやっていただけると聞いたのですが。
谷口社長:いろんな使い方があって、最初は「高齢者が使ってくださるのかな」と思ったのですが、ちょうど新型コロナが流行りだして、年配の方が外出を控えるようになりました。最初の頃、ほとんどのお客様は小さな子どもでした。親御さんから面白そうだと聞いたので、乗られるところからスタートしました。
えびさわ:で、今どんな人たちが主に利用されるのですか?
谷口社長:今も子どもたちも面白いと思って下さいますが、怪我された方が病院との往復に使ったりするようになりました。最近は高齢者施設とも提携をしまして、その施設の入居者さんが病院や飲食店に行かれたり、荷物をロボットに乗せるために買い物に連れて行かれたりなど、そういうご利用をされております。
えびさわ:これから高齢者社会になっていく中で、絶対必要なものだと思います。乗り心地はどうですか?
谷口社長:非常に乗り心地はいいですよ。このロボットは運転をする必要がないので、椅子をゆったりとさせ、卵の中に人が包まれているようなデザインにしました。
-ロボットの表情の秘密 街にとけこむために
えびさわ:この三兄弟の顔も、社長が考えたという噂を聞きましたが。すごくかわいい顔ですね。
谷口社長:このデザインは自分で考えました。一般の人の前で仕事をするロボットは、工業デザインのようなものではなく、公共性も大事だと思いました。これまでにないタイプなので、コンセプトを他のデザイナーさんに伝えるのも難しい。それで、デザインの勉強をするために、東京藝術大学で学びました。
えびさわ:それで、わざわざ大学で学び直したのですね。
谷口社長:研究をして作った成果物が、この子たち(三兄弟の顔)です。
えびさわ:すごくかわいいデザインですよね。ペットっていう表現が良いかどうか分かりませんけど、一緒に生活できる感じの人間っぽい表情でいいなと思います。
谷口社長:特に目を重要なテーマにしました。最初は工業デザインでシンプルなロボットを、少し可愛らしく作っていたのですが。
会社の近くの細い道で、ロボットの実験をしていた時に、反対側から来る通行人の方が「邪魔をしちゃいけないな」って気を遣って、ちょっとよけたりされるのですよ。ロボットとはいえどもおすまし顔で通り過ぎるのは感じが良くないなと気づいたので、デザインを考え直しました。
えびさわ:文京区は意外と細い道が多いですものね。
谷口社長:その時に謙虚な姿勢を示さないと、「あの図々しい邪魔なロボット」だと覚えられて嫌われたらまずいのではと。また、ロボットの場合は目を付けることで、向かってくる通行人の方に自分はどちらに行くのかを意思表示できます。
えびさわ:すごいですね。
谷口社長:アイコンタクトのためですよ。例えばながらスマホで歩いていると、人を見ていないのでぶつかったりすると危ないのと同じ状況なので、ロボットの進む方向が反対側の人に分かるように、目で意思を示したのですね。
えびさわ:これはそういう意味もあったのですね。
谷口社長:道を譲っていただいたときには、ニコッと笑顔でお礼をしたり。それから、実験をしていると興味を持った子どもたちがいっぱい寄ってくるのですね。道の前で子どもたちが立ちはだかった場合、追い払うようにブザーを鳴らすのもかわいそうなので、このロボットが段々と涙を流すように設計しました。
えびさわ:「どいて」って気持ちを表現しているのですね。
谷口社長:ロボットが涙を流した時に「今お仕事中だから、道をあけてくれませんか」と頼むと、子どもたちは素直にどいてくれます。街の中でけなげに働くロボットを作ろうと思って、表情を付けることで周りの人たちと円滑なコミュニケーションができるのですね。
えびさわ:すごいですね。「PATORO」はどうですか?パトロールをするから、時々怒った顔をしなければいけないのではないですか?
谷口社長:これらのロボットは全て、喜怒哀楽の表現を持っています。
えびさわ:その喜怒哀楽は「PATORO」が自分で判断するのですか?
谷口社長:はい、そのとおりです。例えばパトロール中に乱暴なことをしようする不審者を見かけたら、ちょっと怒ってみせるとか。他の表現は別にあるのですが、細かいところを三段階に合わせてAIでその周りの様子を見ながら、喜怒哀楽の表現するわけですね。
えびさわ:社長の優しい気持ちがロボットに反映されている感じなのですね。
谷口社長:ロボットは街の中の新参者ですから、周囲の人に受け入れていただくためには、謙虚さがすごく大切だと思うのですね。
えびさわ:ぜひ、せっかく文京区にある会社ですので、一緒に何かできたらいいと思います。これからも情報交換しながら「優しい街づくり」のアイディアを教えて頂けたらと思うので、よろしくお願いします。
-空からのパトロールも
えびさわ:最近は、空の上から見守るロボットも開発していると伺いましたが。
谷口社長:ソニーとの合弁会社で、ドローンを使った「空飛ぶロボット」を開発しました。空から街の見回りをしたり、工事の建設、土木建築建設の経過を測量したり。空からの観察を含めて、立体的に町全体や世界全体を見守るソリューション・サービスを開始しようとしています。
えびさわ:これからも地震などいろんな災害があると予測されますが、現状をドローンで知ることもできるかなと思うので、そんなときにも相談ができたらいいのですが。
谷口社長:ドローンだけでも映らないところがありますので、地面をゆっくりと移動するロボットと連携して、なるべく細かくいろんな面が見えるようにすることが、災害の予知や予防のデータになります。とにかく多くのデータを集めて、異常を感知することが大切だと思いますね。
-未来のロボット事業 観光業にも進出?
えびさわ:これからもいろんなことがロボットで出来ると思いますが、谷口社長の考える未来のロボット事業はどんなものですか?
谷口社長:現在、全国で十数カ所、実証実験から実用化に進められるところがあります。皆さんの目的はバラバラのように見えますが、大体共通するものがありますね。人の移動とか、買い物ができない人のこと、家にいながら物が届くなどですね。それから、街の中のパトロールや観光にも使われることがあります。
えびさわ:観光でもロボットが使われるのですか?
谷口社長:隅田川で夏の夜景を楽しむツアーや、お花見ツアーがあります。特にお花見はすごく人気なのですよ。
えびさわ:誰がお客様を案内するのですか?
谷口社長:ロボットが案内をします。例えは家族であれば人数分の「RakuRo」に乗って、隊列走行しながら桜並木を観光しますが、大好評です。
えびさわ:いいですね!足の悪い人や高齢者の方も安心です。
谷口社長:それから去年は、姫路城をぐるっと一周する1,000円のツアーをしました。姫路城は自分で歩くのが意外と大変なのですよ、40分はかかるし坂もある。それをロボットに乗って移動すると、ラクな上に好きなところから写真も撮れます。城内がどうなっているか知りたければ、ゴーグルを覗くとARで様子が分ります。アイディア次第で、ロボットによって街を盛り上げていくこともできそうです。
えびさわ:文京区は坂だらけだから、とても良さそうな感じがしましたね。
谷口社長:だから今度は、お花見ツアーをぜひやりたいと思いますね。
えびさわ:ちょうど桜並木で有名な播磨坂もありますし。いいですね、楽しみがどんどん増えました。今日は本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
ライター 乙部 雅子
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